蛇の毒白]T
瞳を見開き、固まったレボルトを無視し、イヴは眼前にあるレボルトの耳を文字通り、甘噛みした。
少女の意識は混濁している筈だ。
確かにイヴの中に毒を注ぎ込んだのはレボルト自身であり、自分だけが忘れられているなんて不公平じゃないかと、あの男の事も、自分の事すらも、全てを忘れさせる意図で少女の首筋に牙を突き立てた。
覚えている訳がない。
混乱する男を無視し、はむはむと、そんな擬音が付きそうなか弱い力で、イヴはレボルトの耳を何度も食む。
先程の仕返しだと言わんばかりに、丁寧に舌を這わせていく。
痛みはなく、ただただ甘美な痺れだけがレボルトの感覚を麻痺させていった。
時折呼吸の為に開かれる口から漏れる吐息が、一層レボルトの情欲を掻き立てる。
「れぼる……んっ……と」
男の名を呼びなからも、少女の瞳は虚ろだ。
ただ無我夢中で、二度とレボルトを離すまいと、必死に縋り付く。
髪に指を絡ませ、無心でレボルトを求め続ける。
「しゅき……っ、は……ぁ、れお、る、はぁ……っ、ん、れ、おる、っ……ぁ……!」
これでもか、と煽られて興奮しない訳がない。
耳の穴に舌を差し込まれ、呂律の回らない甘やかな愛の言葉をひたすらに注ぎ込まれる。
欲しい。欲しくて欲しくて、たまらない。
今、この手に触れている。
あの時手放した筈の少女が、確かにここにいる。
昔のレボルトならどうしただろう、と想いを馳せる。
いや、あの時の自分なら、イヴなら、互いにこんな事はしなかっただろう。
必死に本音を押し隠し、上辺だけの嫌味をぶつけるだけ。
それが、かつてのイヴであり、レボルトという男だった。
「イヴ、様」
未だ嘗て、自分でも聞いた事のない音が、レボルトの口から吐き出された。
あからさまに滲み出る欲と興奮を隠しもせずに、艶やかな吐息を漏らす。
一瞬イヴの攻め手が緩んだ瞬間を見計らい、レボルトは少女の両腕を掴み、ベッドに押し付け、少女を潰してしまわないように、慎重にイヴの上に跨った。
身を乗り出し、素知らぬ顔で、わざとらしく服の中で存在を主張し始めた欲の塊を少女の下腹部に押し付ければ、イヴの顔が真っ赤に染まった。
瞳を細め涙を浮かべ、口から甘い吐息を漏らしながら、恥ずかしげに身をよじるが、それでもレボルト自身から目を離そうとはしない。
ああ、可愛い。
可愛くて可愛くて仕方ない。
一層物量を増したそこに、イヴがぱくぱくと金魚のように数度口を動かした。
艶やかな口から漏れ出るのは、ぁ、だの、ぅ、だの、そんなレボルトを煽るだけのか細い嬌声だけだった。
「煽ったのは、イヴ様の方でしょう?」
わざとらしく、上目遣いで少女を見ながら、イヴの鎖骨に口付けを落とす。
目が合った瞬間、イヴがびくんと身体を震わせた。
「俺の耳は、美味しかったですか?」
「そ……っれ……は……ぁ!」
ぺろり、と身体を前のめりにし、お返しと言わんばかりに、少女の耳に舌を這わす。
その拍子に、レボルトの昂りが少女の下腹部に一層密着し、逃げようとイヴは無意識に腰を引いた。
それを許すまいと、少女の細い腰を片手で掴みながら、もう肩の方の手で少女の纏う白いワンピースのボタンを外していく。
ボタンを3つほど外したところで、飛び込んできたのは、白い肌に散る、痛々しいまでの情事の痕跡。
眉をしかめ、舌打ちをすると、少女の全身を暴き立て始めた。
自身の指を口に含み、必死に嬌声を堪える少女を視界の端に写しながら、レボルトは少女の足に手を伸ばす。
細く白い太ももに触れた瞬間、小さくイヴが声を漏らした。
「イヴ、様」
「んっ……!」
「イヴ様、イヴ様、イヴ、様……っ」
イヴがレボルトにしたのとほぼ同じように、イヴの耳を食みながら、少女の身体を弄る。
ただイヴの名を無心で呼び、飢えた心を満たそうとする。
「そ……ぁ……れ……っ!ぃや……!」
途中、イヴが身をよじり、レボルトの頭をぽかぽかと殴りつけてきた。
「……何、が?」
はむ、と耳を食んだ瞬間、イヴがひやっ!?と素っ頓狂な声を漏らした。
「俺にこうされるのが、嫌、なんですか?」
今更拒絶されたところで、毛頭やめる気はないが、と一人ごち、レボルトは少女が言葉を紡ぐまで、ひたすらにその身体を弄んでいた。
喉を舐め、スカートの裾から腕を入れ、脚の付け根を撫で上げ、露わになった胸を凝視する。
背筋をしならせた少女に、調子に乗り、再び耳の端を甘噛みしながら囁けば、イヴがレボルトの頭を掴む力が強くなった。
「イヴ様」
呼べば呼ぶほど強まる少女の腕に気づいた瞬間、ああ、とレボルトは感嘆の溜息を吐いていた。
「イヴ様」
名を呼びながら少女のドロワーズに腕を掛ける。
恥ずかし気に声を数度上げ、身をよじりはすれど、抵抗する素振りはそれ程見せなかった。
下着の中に指を忍ばせれば、隠されていた女の匂いがレボルトの鼻を刺す。
鋭さを増す瞳を自覚しながら、少女の秘所に軽く指を這わす。
しとどに、とまではいかないが、微かに湿り気を帯びたそこに、レボルトの顔には無意識に笑みが浮かんでいた。
「俺が今、どんな気持ちか分かりますか?」
中指を少女の肉壁の中に埋め込みながら、蛇は甘やかに口付けを落とす。少女の嬌声すらも飲み込もうと、イヴの唇を弄り、舌と舌を絡み合わせ出た淫猥な水音に酔いしれる。
必死にレボルトに応えようと息を乱す少女に煽られ、レボルトの呼吸も荒くなっていった。
時折イヴの舌を甘噛みしては、息を吸い込み、口付けを深めていく。
少女の口からこぼれた唾液すらも舐め取り、文字通り、レボルトはイヴの全てを欲していた。
「れっ、……ふぁ!」
口付けの間に、更に奥深くにまで、少女の腹の中に指を沈めていく。数度抜き差しを繰り返し、そこがじゅぼじゅぼという淫らな音を発する頃には、レボルトの頭から理性などという単語は吹っ飛んでいた。
鼻を突き刺すのは、あの時の比ではない、あからさまな女の匂い。
花開き、男を誘い込む成熟しきったメスの芳香そのものだった。
指を抜き、口付けを中断し、唐突に身体を起こし自身の身体の上から退いたレボルトに、イヴは首を可愛らしく傾げてみせる。
そんな些細な仕草すら愛おしく、レボルトは不安がるイヴの頬に軽く口付けを落とすと、数度頭を撫で、もぞもぞと何やら動き始めた。
不審がるイヴを気にも留めず、イヴが待ってと叫んだ時には既に後の祭りだった。
露わになり、蜜を零す少女の園に、蜜を求める害獣はその毒牙を伸ばす。
両腕で少女の脚を押し開き、その中心を視姦する。
「やめ……っ!み、な……で……!」
「貴女からは、いつも美味しそうな匂いがする」
最早会話は噛み合わず、ただ欲望に任せ、レボルトは舌舐めずりした。
捕食者の顔を写した少女の瞳は涙に濡れ、怯えきっている。だが、恐怖の間には、確かに男の行動を期待する確かな情欲が覗いていた。
「レボりゅ……っ!」
名を呼ばれたのを皮切りに、男の舌が少女の秘所を嬲り始める。
最初は溢れ出る蜜を掬い取るだけだったそれは、イヴが艶やかな声を漏らすたびにエスカレートし、レボルトの舌は、いまや少女の肉壁の中を押し入っていた。
「ぁ、あ、あ、あ」
指と同じように抜き差しを繰り返し、みっともなく顔を埋め、少女の香りを存分に吸収する。
目で、耳で、鼻で、全ての五感を駆使し、余すことなくイヴを味わい尽くしていた。
服の中に隠された昂りは、言うまでもなく痛い程に張り詰め、自己主張を繰り返す。
早くこの中に埋め込みたいという衝動を、何度も少女の名を呼ぶ事で抑え、レボルトはひたすらに喘ぎ声を漏らすイヴを食し続けた。
びくんと背を仰け反らせ、イヴが数度目の絶頂を迎えたのを合図に、ようやくレボルトはのそりと顔を上げた。
胸を上下させ、息をするのもやっと、という状態の少女に、少しやりすぎたかとほんの少しの罪悪感がレボルトを叱咤した。
頭上で口の周りについたものを舐め取ったレボルトは、眼下のイヴには酷く淫らに写り、それだけでイヴは身体の中に熱が駆け抜けていくのを感じた。
「……大丈夫ですか?」
「ん……」
イヴの額に自身の額を押し当て、レボルトは少女を気遣う素振りを見せる。
「へー、き」
それだけの事なのに、なんだかとても嬉しくて、イヴは表情筋をだらしなく緩めると、えへー、と腑抜けた笑みを浮かべた。
「っ……貴女、という、人、は」
苦しげに顔を歪めた男は、もう我慢ならないといった様子で、忙しなくベルトを緩め始めた。
同時に、器用な事にイヴの唇を味わいながら、少女の上に跨り、次にイヴが目を開いた時には、膨張しきったレボルトの怒張がイヴの秘所に充てがわれていた。
あからさまな情欲に支配されながら、それでも決して中に入れようとはしない。
擦り付ける事にとどめ、レボルトはイヴが悶えるのを楽しんでいた。
嗜虐的な笑みを浮かべ、イヴの胸の先端を食み、舌で嬲りながら、何度も入れる事なく秘所に擦り付け続ける。
その度、ぬちゃぬちゃとした、どちらの体液とも分からない、淫猥な水音が互いの耳を犯していた。
「ひっ、ぁ……!」
「イヴ様」
胸の先を含みながら、レボルトが言葉を紡ぎ出す。
じんじんとした熱が、イヴの頭をおかしくさせる。
下腹部に触れるモノは熱く、到底無視できない存在感を放ち、イヴの理性を確実に削り落としていく。
先端がほんの少し中に侵入するだけで、得体の知れない快感が身体を駆け抜ける。
そのまま奥に押し入って欲しい、滅茶苦茶にして欲しい、そんなイヴの願いを見透かした黄金は、決してそれ以上中に押し入ろうとはしない。
イヴの顔が物欲し気に歪む度、レボルトの喉が低い笑い声を漏らした。
「ねぇ、イヴ様」
胸への責め苦を中断し、悪魔は笑いながら少女に囁きかける。
「俺は、イヴ様のペットなんですよ」
ズンッと一際強くイヴの秘所を肉棒で刺激しながら、自分をペットだと皮下した蛇は、恍惚とした笑みを浮かべていた。
「ご主人様の命令がないと何も出来ない、そんな憐れな存在なんですよ」
言いながら、レボルトの口の端はどんどん上がっていく。
口の端を噛み締め、必死に襲いくる波に耐えている少女は、半ば夢の中を彷徨っている感覚だった。
「イヴ様は、俺にどうして欲しいですか?」
「ど、ぁ、う……っ……あ、って……!」
「イヴ様、憐れな蛇に、どうか慈悲をくれませんか」
首筋にキスを落とし、蛇は嗤う。
それは到底ペット、等という可愛らしい微笑ではなく、号令一つでその肉を食い破らんとする、猟犬のそれだった。
「じ、ひ……、んぁ」
何度も表面を虚しく滑るだけのそれに、虚しい喘ぎを何度も何度も漏らす。
欲しい。欲しい。
どうか、この虚無を、埋めて欲しい。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しくて欲しくて仕方ない。
見上げた先の黄金の瞳は、一直線にイヴを射抜く。
その瞳の奥に潜むドロドロとした愛情と欲情を、隠す事なくイヴに注ぎ込む。
それを心地よい、と感じる事が出来るのも、狂気の沙汰としか思えない。
それでも、とイヴはレボルトに手を伸ばす。
「……ほし、い」
ぎらぎらと、レボルトの瞳が輝きを増す。
レボルトの首に腕を回し、イヴはただ求めた。
「わ、たし、は、レ、ボル、ト、がーー!?あ、あ、ぁぁぁあ!!」
言い切らないうちに、イヴの中を男のそれが勢いよく押し開いていた。
散々焦らされ、ドロドロに溶けたそこは、呆気なくレボルトのものを飲み込んでいく。
身体は求めていたものの訪れに歓喜に打ち震え、幸福感が身体中を駆け巡る。
それでも、気遣うようなゆっくりとした律動に、どこか物足りなさを感じ、顔を上げれば、にやにやと笑うレボルトと目が合った。
それだけで切な気に締まる中に、レボルトの笑みが一層強まった気がした。
「どうかされましたか?」
イヴの身体を抱きしめ、柔らかく笑みながらも、レボルトは気付かぬフリを貫き通した。
ゆるゆると腰を動かし、時折奥まで押し込んでは戯れに口付けを落とす。
「そんなに切なそうな顔をしないでくださいよ。……俺にどうして欲しいんですか?……ねぇ……イヴ様」
「……ぅ、ぁ、ん」
「……イヴ様」
熱のこもった声に、イヴは耐え切れず声を漏らす。
レボルトに踊らされている事実に気付きながらも、それで構わないと思っていた。
「……っと」
声が小さいとでも言いたげに、レボルトが耳を食む。
顔を真っ赤にしながら、イヴは半ばやけくそに言葉を吐き出した。
「もっと……っ!」
「……もっと?」
ああ、と呟き、レボルトの怒張がわざとらしく奥までねじ込まれた。
「もっと、どうして欲しいんですか?」
きつくイヴの身体を抱きしめ、囁く。
「イヴ様」
羞恥に震えるイヴを味わいながら、レボルトは辛抱強く待った。
雁字搦めに捕らえられたイヴが折れるのは、もう時間の問題だった。
数秒後、ぎゅっと首に抱きつく腕に力を込め、イヴはレボルトの耳に唇を寄せた。
呟かれた欲望を露わにした言葉を聞き届けた瞬間、今までとは一変、激しくイヴの中を蹂躙し始めた。
強くその腕に少女を抱きしめる。
うわ言のようにレボルトを呼び続け、求める主人に、男はただ食われていた。
「レ、ボルトっ、ぁ、あ、あ、レボ、ル、あ、あっ、あ、あっ、あっ」
あられもない嬌声を漏らし、されるがままに蹂躙される。
それに応え、レボルトが強くイヴを抱き締め、遠慮なく貫く度、ぎぅと少女の中が切な気に締まった。
小さな身体の中を自身の肉棒が出入りする様は、酷く淫靡なものであり、芽生えた熱は衰える事を知らない。
そもそも、蛇の交尾というのは人間のそれに比べ、遥かに長い時間を費やすものだ。
レボルトの律動に、息も絶え絶えになりながらも必死に応える様は酷く情欲をそそられるが、痛々しくもある。
イヴの身体を蝕みながら、果たしてこの少女はどこまで耐えられるのだろうか、とレボルトは思案する。
ズンズンと再奥を何度も貫き、その度イヴの喉があられもない声を上げる。
愛おしい。愛おしくてたまらない、
イヴ様、と呼ぶ度に膣を激しく収縮させる少女に、欲望は静まる事を知らない。
「イヴ様、イヴ様、ぁ、イヴ、さま、ぐっ……」
少女を蹂躙し、何度も何度も名を叫ぶ。
「イ、ヴ」
一層奥を貫いたどさくさに紛れ、囁かれたそれに、大きく目を見開いたイヴが激しく身体を震わせ、中に埋め込まれたものを締め上げた。
それと同時に、レボルトの怒張が白く濁った液体を少女の中に注ぎ込んでいった。
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