みかいざ | ナノ




「綺麗な青、」

晴天と言える真夏の空の下、上を見上げれば眩しい程に輝く太陽がそこにはあった。人気の少ない平日の公園、と言っても今は夏休みという学生特権の長期休み期間な為、小学生が僅かながら公園内で遊んでいた。その中公園のベンチで片手に飲み物の入った缶を手にしている己と、日焼け対策か何か、夏だというのにフードへファーのついた黒いジャケットを纏う折原臨也が座っていた。対した話ではなかった、かと言ってダラーズやそう言う系の話でもなかった、手にしていた缶の縁へ口を付け中身の炭酸飲料水を喉へ流し込む、このぱちぱちとした感覚が咥内へ広がるのがたまらなかった。こくりと鳴る喉元を多少爪が伸びてしまった指先で撫でる、撫でる事に対してとくに意味はないがただ撫でてみただけというのでは答えにならないのだろうかと頭の悪い人間みたいに誰かが聞いてる訳でもないというのにただ一人寂しく心の中で自問自答に限りなく似たものを繰り返す。それが楽しいと聞かれれば楽しい様に感じてくるが、楽しくないだろうと問われればきっとなんて馬鹿らしいのだろうかと呆れ返ってしまうと思う。しかし隣に人が居るというのに会話が一向に進まないのはきっと己と彼の相性が悪いか今日の占いが最下位だったかに違いないと確信した


「帝人くんもそう思わないかい?」
「え?」
「空が凄く青いと思うかな、って」
「嗚呼、青いですね、凄く」


改めて会話のキャッチボールの難しさを身を通した感じた、腹立たしい程に眩しいその太陽を双眸を僅かながら細めた片目で覗くような形で見てみるがあまりの眩しさにあまり視線を向ける事は出来なかった。太陽へ向けていた視線を公園の所謂芝生、というよりは土に近い地面へ向けるが多少ながら目がチカチカとし何度か瞬きをする。暫くしチカチカとしたものが消え漸くすっきりすると缶の中の残りわずかな炭酸飲料水を一気に飲み干す、再び咥内で広がる感覚を味わう、校内で広がっていた感覚が消えゆっくりと深いという言葉が適している溜息を吐き出す。ふと隣に居た彼へ視線を向ければ此方を見つめ小さく笑っているように感じられ多少感じる羞恥に顔が熱くなるのを感じた


「臨也さん、ここじゃ暑いので僕の家に」
「それなら俺の家に行こうじゃないか」


ゆっくりと立ち上がった彼は普段と変わらぬような自然だが何処か何かを隠し持つ笑みを浮かばせると己へ骨張り細い指がすらりとした掌が差し出された。太陽のせいか彼の顔をあまり直視する事は出来ないが差し出された掌を掴み立ち上がり近場のゴミ箱へ空き缶を投げ捨てる、掴んでいた掌をゆっくりと離し彼へ顔を向ければさあ行こうかと一人歩き出してしまった、慌てて追うように足取りを早めながら彼の後ろ姿を追う


「臨也さんは、細いですね」
「そうかな、これでもちゃんと食事は食べてるんだけどね」
「そうなんですか?臨也さんってカロリーメイトとかで済ませそうなイメージです」
「あはは、よく言われるよ」
「だけど食べてるって言われたら一流シェフの高級料理とか食べてそうな感じが…」
「うーん、そこそこ正解、かな?」
「え…!」


他愛もないどうでもいい会話すらがどうしようもなく素晴らしいものに感じられてしまうのはきっと普段する会話とのギャップだろうと感じた、ゆっくりと瞬きをしながらたまに此方へ振り返る彼の笑みを見つめながら己を笑みを返しつつ気付けば彼のマンションの目の前へとついてしまっていた、楽しさなどは何時も短く感じてしまう感覚がどうも好きではなかった。彼に着いていきながら高級マンションへと足を踏み込ませ指紋で開く形の鍵で玄関の扉を開ける。家の中へ入ると彼に案内されリビングへと向かい目の行き届いている綺麗なソファーに座れば、波江さんという女性が氷が入れられオレンジジュースの注がれたグラスが差し出された


(オレンジジュース…、)


差し出されたオレンジジュースを凝視しながらも向かい側のソファーへ腰を下ろす彼に視線を向けると先程羽織っていたジャケットは流石に脱いでいた、細腰のラインがくっきりと見えるVネックの黒いシャツが彼には凄く似合っているなどと思いながらグラスを手に取りさされているストローへ口を付けきゅーと音を立てながらオレンジジュースを喉へ流し込んでいく


「随分良い飲みっぷりだね」


その言葉に無意識か慌ててストローを口元から離す、羞恥で顔が熱くなるような感覚に襲われながらも手にしていたグラスをコースターへ置き小さく深呼吸をした刹那

――プルルル、プルルル

電話の音が鳴った、携帯の方かと思いきや鳴っていたのは家電であり彼は焦る事なくゆっくり立ち上がると音の鳴る受話器を手に取り耳へと押しあてた


「ええ、折原ですけど。嗚呼、貴方でしたか、お世話になっております」

(知らない人だ…)
(誰だろう)
(仕事の相手先?)
(僕より大切な人?)
(臨也さんは誰を見てるの?)
(その瞳には誰が映ってる?)
(貴方は誰の物ですか?)


握りこぶしに自然と力が籠もった、だけど決して表情は崩さない。暫くすると彼は電話を切った、そして此方へ向けられるのは申し訳なさそうにした彼の顔


「ごめん、用事が入ってね」
「大丈夫です」
(大丈夫なんかじゃない)

「折角だから送ろうか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
(少しでも長く居たい)

「じゃあ気をつけてね」
「はい、ではさようなら」
(貴方は…貴方は、)




(になると信じた夏)
(きっと一生僕の物にはならない)
(いっそ籠の中の鳥にしたい)




2010.08.13

トラップゲーム」様に提出しました



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