平和島サンド | ナノ


はくあいさん宅の茶会にて捧げた静臨←幽です
ただのごみくおりてぃなのでご注意を!

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シズちゃんと臨也喧嘩後


殴られた頬がひりひりと痛む
頬から伝わる痛みにきゅっと眉が寄り自然と全身から力が抜け壁に寄り掛かる感じとなった
目の前に待つブローチされた金髪が目に痛く思わず目を逸らすと、男からは大きな舌打ちが聞こえた

(舌打ちしたいのはこっちの方なんだけど、)

此方へ向けられる目力に思わず退いてしまいたい気分でもあったが喧嘩の原因が相手ではなく己であった
最近仕事が連休続きで体調も悪いという事がありまさかではあったが、案の定折角予定が合い此方へ来てくれたシズちゃんの目の前で吐いしまった
自分が体調を悪い事を恋人である相手に言ってなかったからなのだろうか、最初は驚く顔をしていた
俺も正直驚いて慌てて洗面所に向かおうとした時だった、いきなり片手を引かれたと思えば頬を殴られた
普段よりはかなり優しめだったけどかなり痛かったのは事実だ
体調が悪い相手を殴るのはどうかと思ったが言わなかった己に傷ついたシズちゃんの気持ちがわからない訳では無かった

「手前には失望した」

その一言を呟いて家を出ていったシズちゃんの背中が凄く辛そうだったのは、ただ俺が辛かったらそう見えた訳であった
伸ばしていた足を胸元へ折るように寄せ、重い両手でその足を抱いて顔を埋める様に俯けば、ただただ虚しさだけが込み上げた
ぎりっと歯を噛み合わせをすれば自分への絶望感が襲い掛かってくる事にふっと涙腺が緩んだ事を感じた

(シズちゃんを心配させたくないから言わなかったのに、それを失望、か)

ただの自嘲だ
ゆるゆると溢れだす涙は頬を伝っていた


*


久々の休日であった、何ヶ月振りかに兄へ挨拶するべく向けた足の向かう方向は己の想い人だ
足取りは重く、まるでなまり玉が足に貼り付けられているように感じたが足が止まることは無い
不意に己を横切る相手に見覚えがあった
己の兄である気付いた時には既に想い人の自宅前へとやってきていた
扉は無防備にも半開きをしていた
緩慢とした動作で扉を開けると廊下の奥からはすすり泣きが聞こえた
動揺などする事なく靴を脱ぎ、ゆっくりとリビングへ向かえば部屋の隅で泣いている、兄の恋人が居た
泣いている理由は想像出来た
また兄と喧嘩をしたのだろう、それしか理由を探る事が出来なかった

「…っ、ひ…く…っ、」

ゆっくり近づき彼と視線を合わせるべく腰を下ろせば涙でぐしゃぐしゃになった顔が此方へ上げられた
その瞳には僅かながら恐怖が滲んでいる
涙を拭う為そっと手を伸ばし親指の腹で涙を拭おうとすると、彼の肩がびくんと跳ね己の指から逃げるように顔が俯かれた

「大丈夫ですよ、」

何が、と問うように彼は再び顔を上げ俺を睨んできた
今度は逃さぬ様に彼の頬に力を込め掌を染め目尻に口付けを落とすと更に彼は涙を溢した
声には出さず口だけを動かし大丈夫ですよ、と告げれば大丈夫じゃないよ、と口だけを彼は動かした

「貴方には俺がついてますから、俺は貴方が好きです」

己の言葉に潤んでいた双眸が僅かながら開くと眉を八の字に下げ、まるで駄々を捏ねる子供のように首を振っている
ただ首を振るだけで何を言う訳でもなかった
顔を固定するように再び添えた手に力を込めると腫れた瞳が此方へ向けられた
恐怖に恐れる瞳だった

「嘘、だよ、だって君とシズちゃんは兄弟じゃないか…、」

それが、と問いたくなるような言葉に思わず眉が寄りそうになった
己が何故と問う前に彼は再び口を開き喋り出し
そしてその言葉にポーカーフェイスが崩れるかと思ったの秘密だ

「同じ血の繋がった、シズちゃんと、幽君、なんだから、君だって俺を独りに、するよ」

確定として告げられた言葉は事実だと感じた
流石長年兄と関わってきているだけあるのだと、ある意味尊敬をしてしまった
震える唇を舐めるように唇を割り舌を咥内へ入れ軽い口付けを施した

(ああ、本当、わかってる)

怯えを孕んだその瞳には兄へ向けられるものとそう変わらなかった
彼はぐっと唇を噛み締めている
だから俺は、普段の声色で言葉を告げた

「俺は貴方を幸せにする事ができます」

(本当は、出来る訳ない)


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