こんなに幸せなことってあるでしょうか
「受け取ってくれるかい…? ふふ。嬉しそうなの、隠しきれてないよ」
女神様が住む泉の側で、きょうあなたに青い羽根をもらいました。
「どうしたのかな? なぜ声に出して笑わないんだい?」
そう言ったあなたは若干困った顔をしていた。
春のやわらかい風が、ふわふわと羽根の先を揺らしながら白い花びらを運ぶ。
違うの、ただ嬉しすぎて、この幸せを受け入れるのに精一杯だっただけ。
私は彼をそっと抱きしめた。彼は抱き締められた瞬間はびっくりしたのか、面白いくらいに固まっていたけど、すぐに優しく腕を回してくれた。
「それで…、返事を聞かせてくれるかな」
私はもっとぎゅっと抱き締めた。胸がいっぱいでちゃんと声に出せるか心配になった。
「いいよ、その羽根を私にください」
こんなにこの人の腕の中にいるのが心地よいなんて
こんなにこの人の温度を感じるだけで心が安らぐなんて
彼は穏やかに微笑んで言いました。
「僕を選んでくれてありがとう…。これから先、ずっと君を幸せにしてみせるから、どうか付いてきてほしい」
あなたがいるのであれば、どこへだって着いていきます。
あなたが私を幸せにするというのなら、私も抱えきれないくらいの幸せをあなたにあげたい。
「さぁ、行こうか。式の段取りを相談しなければ」
あなたはそっと私を離して、代わりに私の手をとった。
歩き出したあなたの黒髪を、春の陽光が照らした。
この日は、この光景は、この感触は、このあたたかさは、きっと人生の最期の日まで覚えていることでしょう。
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