「こんにちは、クレア君…、ってどうしたんだい!?」

こんにちはー、とかぼそく挨拶しながら医院に入ってきたのは、フラフラのクレア君だった。壁にもたれかかりながらお腹を押さえている。

「大丈夫?とりあえず座って」

僕はクレア君を支えて移動させた。体は震えているし、苦しそうな息遣いをしている。

「ごめんなさい…、いつもは適当に寝てれば治るんだけど、今日はなんだかおかしくて…」
「とりあえず診察しよう」

僕はいろいろ質問してみたが、原因は分かりそうになかった。

「と、なると…、ストレス性のものかもしれない。普段のツケが回ったんだろう。点滴を打つから、今日はここで休んでいくんだよ」
「えっ、それは困るよ…まだあの子達のお世話してないんだから」

僕は立ち上がろうとする彼女を止めた。

「行かなきゃ…、離してください。私がいないとあの子達は困るの」
「あのね、クレア君。病気は病院に行けば治るものじゃない。十分な休養がないと治らないんだよ。今はかなり疲れている状態だから、これ以上無理をしてはいけないよ」

僕は彼女をベッドに移動させた。彼女はしぶしぶ横になった。

「まったく…、こんなになるまで働くなんて。医者として見過ごせないな」
「まだまだやりたいことがたくさんあるのに…」
「ダメだよ。今日はここから帰さないからね」

今回は最悪な事態になる一歩手前で病院に来てくれたからよかったけど、どこかで倒れられでもしたら…

「ドクター? …どうかしたの?」

どうやら僕は考え込んでしまっていたらしい。クレア君が心配そうに声をかけた。

「頼むから…、本当にあまり無理をしないでほしいんだ。キミに何かあったら僕は…」

そこまで言いかけて僕はハッとした。

「ま、町医者として困るからね。町民の健康管理は僕の責任だし」
「そっか…。ごめんねドクター。心配かけて」
「そうだ、これからは定期的に検診においで。そうしたら君が頑張りすぎていないか分かるから」

嘘ばかりついている。本当は君の状態を把握したいだけ。君に会いに来てほしいだけなんだ。

「…点滴の用意をしてくるから、くれぐれも大人しくしているようにね」

そんな邪念を振り切って裏へ回った。今はあんなに悪い顔色をしてる彼女の手当てをすることが最優先だ。
用具を準備して寝台の前に戻ると、クレア君は辛そうなのに笑っていた。

「それじゃ…、私は牧場で取れた蜂蜜を持っていくね。ドクター蜂蜜好きでしょ?」

「ありがたいけど、本当に無理はダメだからね」

彼女の細い腕に触れた。思った以上のなめらかさに、つい手元が揺らいだ。

「ほんの少しだけ痛むよ」

白い肌に針が埋まっていく。ぴくり、と彼女は震えた。

あぁ、どうして僕はこの愛しい存在の全てを知ることができないのだろう。
彼女に僕の知らない部分があるということが気に食わない。落ち着かない。

「…はい、処置は終わったよ。あまり手を動かさないようにね。それと、変わったことがあったらすぐに言うこと。いいね?」

いま君がここに来て休んでいる間は、ずっと監視できるというのに。


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