「クレア君、起きるんだ」
「うん……?」
「もう朝だよ。朝食は作っておいたからはやく起きてきてくれ」
食卓にはトースト、ゆで卵、色とりどりのサラダ、果物やらが並んでいた。
「わー…、すごい…健康的」
「君はすぐ無理をしようとするから、食事くらいはいいバランスのものを取らせたくてね」
「私こんな朝ごはん食べたことないよ…。朝は忙しいから、適当にみんなに配った残りのケーキとかクッキーとかを口に詰め込んでた」
クレアの言葉を聞いたドクターは、眉間にシワを寄せた。
「聞き捨てならないな…。そんなものが食事にはならないだろう」
「しまった…、またドクターの健康オタクな部分を引き出してしまった!」
「健康オタク…?まぁなんでもいいけど。とにかく」
ドクターはコーヒーを淹れながら話した。
「僕と結婚したからには、もう君にそんな食事はさせないからね」
「はーい、ふふふ」
椅子に座って、卵のからをむきながら、クレアは笑みをこぼした。二人分のコーヒーを持ったドクターは不思議そうに尋ねた。
「どうしたんだい?」
「いや、あのね、私たち結婚したんだなって思っただけ」
それを聞いたドクターは、柔らかく笑った。
「そうだね。もう君は、僕の妻なんだからせいぜい覚悟することだね」
「何を?」
「僕に毎日小言を言われることを」
トーストをかじりながらクレアは笑った。
「毎日診断されちゃう」
「いいよ、朝も夜もしてあげようか」
「えっ、元気だから大丈夫だよっ。そうだ!夜は私が作るよ」
テーブルの上に並んでいるものは、バランスはいいけど簡単に作れるものばかりだった。
(あんまり得意じゃないのに私のために作ってくれたんだよね)
「今度は私があなたのために作ってあげるね」
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