違和感。
いつもは仕事が終わるなりすぐに俺の部屋へ押しかけてくるくせに。今日は、俺と顔を合わさずにすぐに消えたから。なんとなく予想はついていたのだ。
こいつは、毎回それを隠そうともしない。
反省しているのか。それとも、俺を試しているつもりなのか。


彼が知らない香りを連れてくる時。
それはつまり。


俺の顔には呆れと落胆が顕著に表れていたのだろう。
コプチェフは「ごめん」と心底申し訳なさそうに謝罪した。
彼の情けない表情に、小さい子供を叱り付けているような妙な気分に襲われる。けれど。

こいつは絶対に「反省」なんかしていない。ここでこんな言葉を発したとて、どうせまた繰り返すのだ。



この前も。
その前もその前も。

いつもそうだ。



ここまで来ると、学習能力云々の問題ではないのかもしれない。もしそうならば、これはこいつの根っからの性質なのであって。



「誘われちゃったから、……酔ってたし」

「………」

「ねぇ、ボリス……」



わざとらしい甘えたような声を聴いたのも、これで何度目か。
誘われたから、なんて。
まるで、自分は悪くないかのような言い草だ。全て相手に責任があるかのような、言い訳じみた態度。






嫌い。
大嫌いだ。






「………仕方ねぇな」

「ごめんね、本当に……」





俺を抱きしめる腕も
愛してると耳許で囁く声も、酷く優しい。
この優しさが嘘なのか。そんな事はわからなかったが。どうしても、誤魔化すような。拗ねた子供をあやすような。
そういう風に、聞こえてしまう。











いつまでも黙って許すと思ったか?











そんな筈

無ぇだろ















何も気にしてないような顔で俺がただ、笑うからって。
許された様な気になってんだろ。
なぁ?コプチェフ。














許したつもりは無い。
ただ、こいつかどこまで馬鹿なのか。それを見定めたかっただけ。
俺は独占欲が強いから。いつまでめ笑って「許して」やると思ったら大間違いだ。

もし俺の気持ちを確かめるために、なんて考えでこんな事を続けているのであれば。そんな馬鹿らしい考えを、二度と持てないように。
根っからの性質だとしても。どちらにせよ、根から叩き直して正すまで。






抱き寄せられるがままに、コプチェフの胸に顔を埋め、耳を当てる。
どくりと脈打つ、鼓動。





こいつの全てが
愛しくてたまらなかった。




だから。




漂う嗅ぎ慣れない煙草と香水の香を感じながら、脈打つ彼の命に唇を寄せた。












誰にも
渡さない。

















「俺も、愛してる」

















(嫌というほどわからせてやるよ)



-----------




胸(property/所有)





「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -