Frozen's thervant 
 -アナ雪エルサ主従夢-




風花が舞い、冷えて澄み渡る空がきらめく地、フィヨルドの結晶アレンデール王国。
今日という日を祝福するかのような凍て晴れの空の下、城下に集まる民衆たちは寒さなど忘れ大いに賑わっていた。
「待ちきれない」「楽しみだわ」などといった言葉が、いたるところから湧いては騒ぎに混ざって溶けていく。
祝いの花火がドン、ドンとあがると、音のたびに雪の結晶のきらめきが増していった。

今日は、つい先日生まれたばかりのアレンデール王国次期女王が初めて国民たちの前に姿を現わす日だ。
「エルサ」と名付けられた赤子は、現国王・アグナルの腕に抱かれ、イドゥナ王妃によって温かなポンチョに包まれていた。
警備隊の将校や大臣たちの祝辞も終わり、赤子を抱えた国王と王妃が前へと進み出る。
いよいよもってのお披露目だ。

「ヴィル、よく見ておくんだぞ」

特別に装飾された櫓の後方で、ヴィルと呼ばれた子を抱えた警備隊の青年が顔を輝かせて言い聞かせた。

「おまえが生涯お守りする御仁だ」

下方から民衆の割れるような歓声と拍手が湧き起こる。
青年の視線の先には、睦まじく赤子をあやす夫婦の背中があった。

「おまもりする!」

齢3歳のヴィルにその意味などあってないようなものだったが、それでも青年は満足げに微笑み、他の警備隊士らと並んで敬礼を行った。

「!」

父親の敬礼を見たヴィルは、電撃が走ったように顔をきらめかせた。

「おりる!」

ヴィルはそう言うや否や、もぞもぞと身を捩ると、この親子間に静電気が起きたようで、ヴィルを抱く腕にパチッと電気が走った。
落ちそうになるところを父が慌てて降ろすと、ヴィルも警備隊の列に並んで敬礼の真似事をした。
隊士たちの笑い声が聞こえたアグナルとイドゥナも振り返ると、そのヴィルの姿に喜びの笑顔を湛えた。
自信たっぷりに胸を膨らませたヴィルは、「おまもりする」という使命感に(意味は分からずとも)燃えあがり、
また、ヴィルの周囲は未だにパチパチッと静電気が起き続け、髪が数束、所どころ浮き上がっていた。


このとき、ヴィル・ソールバルグに電撃の魔法の力が宿ったと発覚するのは、もう少しあとの話だ。




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