火ランタン 〜怪談部の夢物語〜
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プロローグ

1

僕は夢の中にいる。

僕の同級生が入れ代わり立ち代わり僕の夢の中に現れるけれど、彼らの役どころはそのたびに異なる。

彼らは確かに僕の見知っている彼らではあるけれど、その関係性は普段の彼らとは違う。

夢の中の舞台は学校であることが多い。それは僕の記憶の大半が学校で占められているからかもしれない。または他の何か解釈学的な理由があるのかもしれない。

夢の中の記憶には明確なストーリーはない。それらは断片の短編小説のようなものだ。印象的なシーンで占められているけれど、その物語はどこか継ぎはぎである。

2

僕はいつも通り学校に向かう。

これは夢ではなく現実であると気付くまでに、果たしてどのような過程が必要だろう。頬をつねることだろうか。

夢の中では、それは確かに自分にとっての身近な日常であり、それが夢だと気付くまでには僕はすでに目覚めている。

というよりも、夢だと気付いた瞬間に目が覚めるという方が正しいのかもしれない。

僕は確かにこの日常を現実だと思っているけれど、もしかしたらこれは夢で、そうだと気付いた瞬間には目覚めるのかもしれない。

3

夢の中でこれは夢だと自覚的に行動できる時、それは目覚めに近い状態なのかもしれない。

夢だとわかっていながら、それでもなお夢の中で行動するとき、それはある種の理想的な空間ではあるけれど、一方でどこか恐ろしい雰囲気も伴う。

現実ではない夢の中で、自ら自覚的に行動する時、それはどこまでいっても夢の中であり、仮にその中で自らの願望が成就したとしても、やっぱりそれは夢のままなのである。

好きなあの子が出てきたとしても、どんなに仲良くなったとしても、それは夢のままなのだ。


第一章

1 学校の魔物

この学校にはある噂がある。

東階段にある鏡の前、夜の1時から3時の丑の刻に、何かが現れるという。

学校に広がる噂は大半が面白半分で、退屈な生徒が暇つぶしに何か考えているのだとその時の僕らは思っていた。

実際、夜中に学校にいる生徒などいなくて、そもそもどうやって確かめるのだというものも多い。怪談の多くは真夜中に起こるのだ。

今日も教室はひどく平和で、それなりに男子の殴り合いがある以外は、それに女子同士の陰口がある以外は、至っていつもの教室だった。

僕がぼんやりと教室を眺めていると、誰かが話しかけてきた。

「よお。おはよう」

影山秀夫。通称ヒデ。僕と同じクラスの友人である。

「誰だっけ」

「ひでえなあ」

僕らは適当に冗談を交わして打ち解ける。

「あそこ何やってんの」

「あれじゃない、いつもの」

教室の隅では暇な男女がこっくりさんに打ち込んでいる。同い年の男女が指を重ねて顔を近づけ、緊張の中笑いあっていれば、新たな恋も生まれるのかもしれない。

「仲の良いこった」

「楽しそうだね」

僕は何げなく彼らを見つめる。

「何、一緒にやりたいの」

「まさか」

そういう怪談系には遊び半分で手を出さないようにしている。完全に信じているわけではないけれど、何かあってからでは遅いからだ。

「おはよう」

右前方から何だか可愛い声がする。

「おはよう」

遠上可憐。同じクラスの友人。歯に衣着せぬもの言いでよくブログが荒れたりするので、炎上さんと呼ばれる。

「昨日の荒らしコメントが酷かった」

「何を書いたの」

僕は彼女の報告を今日も聞く。

「私は原発なんていらないファックって書いただけなのに」

僕は何も言わないことにした。

「遅れて登場!」

右後方から飛んでくるカバン。僕はそれを華麗によける。そのままカバンは窓の外に飛んでいく。

「ちょっとー!」

新良木夢花。

本物語ロリ担当。金髪ツインテールの元気っ子である。

「私のかばんー!」

彼女のカバンは犠牲となったのだ。

「いくぞー!」

彼女のカバンはいつも通り野球部が投げてくれた。彼女にはファンが多いのである。

「ちゃんと私のカバン受け止めなさいよ!」

「そんな義理はない」

「これは命令よ」

「このロリっ子め」

「くっ…!」

こうして今日も僕らの日常は続いていく。

はずだった。



(あとがき)
何となく今回は長く書けそうな気がします。ただ毎回そう思っているので、またすぐに飽きてしまうかもしれません。がんばります。



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