からうまれた凛太郎
sub title



おじいさんはフェンシングへ、

おばあさんはボクシングへ行っていると、

どんぶらこ どんぶらこと

大きな桃が流れてきました。

川から上がった桃は二足歩行で

おじいさんの家へ向かいます。

桃から足が生えたその様子は

まるで宇宙人のようです。

桃はおじいさんの家へ着くと、

足を引っ込め、

二人の帰りを待ちました。

桃の底には二つの穴が空いています。

空気環境もバッチリです。

おじいさんは家に帰ると驚きました。

大きな桃が居間の真ん中に占拠しているのです。

「なん…だと…」

おじいさんは持ち前のフェンシングで応戦します。

サーベルが桃に刺さります。

「やわらかい…」


おばあさんが家に帰ると、驚きました。

おじいさんが居間の真ん中でサーベル片手に桃を突き刺しているのです。

「おじいさんや、いくら欲求不満だからって、そんな遠まわしな表現はやめておくれ」

「おまえは…何をいってるんだ…?」

「あれまあ、恥ずかしいわあ。それ以上言わせないでおくれ。欲情したんでしょ?」

「そんなばかな」

おじいさんは説明しました。

「なるほどねぇ」

「どうしたものか…」

「とりあえず割りましょう」

ストン!!!

おばあさんが得意の手刀をくり出すと、

落雷が起き、空が割れました。

中から出てきたのは、小さな太郎でした。

「凛と名づけましょう」

こうして、凛太郎はおじいさんと

おばあさんに大切に育てられました。


「おじいさん!おばあさん!」

凛太郎はすっかり大きくなりました。

「鬼退治にいきたいんだ!」

「ではこれを持っていきなさい」

「これは…」

「おじいさんのプロマイド写真よ」

「若い頃は、すごくかっこよかったんだから」

「うん…ありがとう…」


凛太郎はおじいさんのプロマイド写真を引っさげ、旅に出ました。


しばらく歩くと、まえからとこさんがやって来ました。

「三度の飯よりセッカさんが好き、天然宇宙人のとこさんだよー☆」

凛太郎は素通りしました。

「ちょっと、ちょっとちょっと☆」

凛太郎はやっぱり素通りしました。

「あんたのぶら下げてるそのプロマイド、超絶イケメンじゃない。私に一枚くれない?☆」

「その星をどうにかしたらあげる」

「わかった」

凛太郎はおじいさんのプロマイド写真を一枚あげました。

もう少し歩くと、前から僧さんが歩いて来ました。

「右手が詩人であるならば、左手はさそりである。私の右手は常に詩を紡ぐが、私の左手は常にセクハラをする」

「変態だ…」

「おっとこれは失礼。私は通りすがりの僧。僧さんと呼んでおくれ」

凛太郎は素通りしました。

「そこにいる水色の女の子、私の左手が反応している」

「やめてください」

「ちょっとその耳を触らせてもらっても」

「やめてください」

「よし、では私もお供するとしよう」


鬼ヶ島。

カラスと話す鬼が一人。

「なに、鬼退治?」

「はい、蒸鬼様。太郎と宇宙人と変態が一人」

「こちとら家族も子どももいるんだ」


「返り討ちにしてやる」


鬼ヶ島上陸。

「ねえねえ、仲間少なくない」

「ちょっとその耳触っても」

「とうちゃくー!」


鬼ヶ島の門が開く。


「われはさいしょのなんかん!こおにのおうぎ、みてみ…ヘブシ!」

凛太郎はパンチした。

「なんて残虐非道なんだー!」

カラスが叫んだ。


「我は第二の難関、中鬼の平太。ここを通りたくば我を倒してから…ドカン!!」

とこさんは爆弾まりもを投げた。

「飛び道具は反則だー!」

カラスが叫んだ。


「わたしは第三の難関、美鬼の百花。ここを通りたくば私を…あん、そこはだめ、いやん…」

僧さんはセクハラをした。

「変態だー!」

カラスが叫んだ。


大鬼の登場。

「おいおい、人の家族になにしてやがんだ」

「あんたがボスね。今のがあんたの家族なの?」

「なにいってやがんだ」


「鬼ヶ島のもんは、みんなわしの家族だろうが!!!」


大鬼が叫んだ。みるみる身体が大きくなる。その大きさは、凛太郎が見上げる遥か彼方になった。

大鬼が踏みつける。

爆弾まりもが爆発して周囲は大混乱。

所々に火が燃え移り、凛太郎たちは

逃げ場を失った。

「どうしよう」

「もう終わりか…」

「たすけて…」



「さらばだ、バカな人間ども」



凛太郎が涙を零す。

雫が頬を伝り地面に落ちる。

すると、空に一筋の光が。


「誰が呼んだか知らないな。べつに呼ばれてもいないかも。とにかくピンチに駆けつける、謎のヒーローキツネ仮面!只今惨状!」


「キツネ仮面!!」

「きゃーキツネ仮面ー!」

「うおーキツネ仮面ー!」


キツネ仮面が大鬼の周りを飛び回り、大鬼は目が眩んで倒れた。


「いまだ、凛太郎!」

キツネ仮面が叫ぶ。


凛太郎は飛び上がった。

「猫術拳法奥義 竜巻旋風猫脚!!!」

怒涛の回転蹴りが大鬼の腹部にあたる。


大鬼はみるみる小さくなり、

もとの大鬼に戻った。


「ありがとうキツネ仮面!」

「君のピンチに駆けつける、謎のヒーローキツネ仮面。さらば!」

キツネ仮面は遠くの空に消えた。


「おまえはいったい、何をしにきたんだ。凛太郎」

「冒険の旅よ!」

「人の仲間を傷つけてもか」

「わるいわね」


「金銀財宝は貰っていくわ」


凛太郎は故郷へ帰り、村の人達に金銀財宝を配りました。

とこさんは宇宙へ帰り、僧さんはお寺に帰りました。

凛太郎は桃の舟に乗り、新たな旅に出かけるのでした。


めでたしめでたし。


(あとがき)

凛太郎(凛さん)
とこ(とこさん)
僧(奏さん)
蒸鬼様(joukiさん)

Special thanks Mr.Waga.



[戻る]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -