忘備録 3
彼女が神社に入っていくのを見た。
こんな時間に何をしているんだろう。
彼女は、あいつの幼なじみで、あいつのことを好きなのはよく知っている。
あいつって、そうあいつさ。この物語の主人公さ。
そもそもこんな時間に出歩いている僕も僕だが、こんな時間に神社に来る彼女もどうかしている。
僕はべつにいいんだ。どうせ家には誰もいないんだから。
僕は彼女のあとをそっと付いていく。
彼女が立ち止まる。
僕は近くの木の陰から、彼女を覗く。
彼女は藁人形と釘を取り出し、
それを藁人形に打ち付け始めた。
「死ね!死ね!死ね!死ね!」
彼女の叫ぶような声が聞こえる。
僕は恐ろしくなって逃げだした。
後日、あの子が死んだ。
僕の好きだったあの子が。
彼女が殺したんだ。
彼女が、あの子を殺したんだ。
事故?
そんなの嘘だ。
彼女が殺したんだ。
彼女のせいだ。
全て彼女のせいだ。
許さない。
僕は彼女を、絶対に許さない。
そうだ。
そもそもあいつが悪いんだ。
あいつがいたから、
彼女は嫉妬したんだ。
あいつさえいなければ、
彼女は死ななかったんだ。
(あとがき)夜。神社。叫び声。藁人形。憎悪。