備録
sub title





そのメモには このように 書かれていた


19XX年 8月 8日 忘れない





この村には 次のような 言い伝え がある


村の真ん中にある 大きな木の前で  契りを交わした 二人は  永遠に結ばれる





「ちぎりってなんだろうね?」

「うーん、なんだろうね。」

「キスとかかな?」

「さあ、けっこんとかじゃない?」

「でも 木のまえでけっこんなんて 見たことないよ?」

「そうだね、なんだろう。」



その頃の僕らは、契りの意味など知らずにいた。

あれは確か、僕らが小学校一年生の頃だ。



「ねぇ、大きくなったら 私とけっこんしてくれる?」

「…いやだ。」

「なんでよ〜」

「はずかしいもん。」

「じゃあ キス して」

「いやだ。」

「なんでよ〜」



彼は恥ずかしくなって、先に行ってしまう。

私は 急いで追いかける。



「まって。」



私は 彼の手を掴む。

彼が 後ろを振り向く。



「………!」



私は 彼の唇に 思いきり キスをした


        ○


その時のことを、僕はよく覚えていない。

と言えば、それは嘘になる。

ただ、あまりの一瞬の出来事に、僕は呆然としていた。

気付いたら、彼女の顔が目の前にあった。

歯が当たって 痛かった。


        ○


それはちょうど、あの大きな木の前だった。

私はずっと、この時を狙っていたのだ。

虎視眈々と。

計画的に。




(あとがき)ホラー。村。契り。少年と少女。交わされた約束。結ばれた縁。


[戻る]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -