天空の使者 2
愛は憎しみに変わる。
かつて好きだった女の子は今ではもう好きではないし、むしろ憎んでいる。
私は彼女が嫌いだ。
これは私のエゴだ。それは間違いない。
しかし、他にどうしろというのだ。
あれほど好きだった感情は、どこに向かうというのか。
私はただ途方にくれる。自分の愚かさに。
○
僕らは空を飛んでいた。
正確に言うと、私が飛んでいて、彼女は背中に乗るだけだが。
彼女は言った。
「そう、空。」
私はわけもわからず地上を飛び立ち、彼女の言う空を目指す。
しかし、空とはこれいかに。
「見えてきたわ。」
辺りが雲に覆われていてよく見えないが。城?あれは城なのか?天空にある城?ラピュタ?ラピュタなの?夢だけど?夢じゃなかった?ラピュタは本当にあったのか!
「あれが魔王の城よ。」
魔王の城だった。期待してたのと違った。夢だけど。夢だった。ラピュタではなかった。
「あれはかつてバベルと呼ばれていたわ。」
バベル?バベルの塔?
「あそこにはかつて神がすんでいたの。」
神か。いよいよスケールが大きくなってきたぞ。
「今から神に会いに行くわ。」
マジで。
魔王の城を横目にしながら、僕らは天空の世界の辺境、レンブラントへと向かう。
別名、『始まりの町』だ。
○
「ここがレンブラントよ。」
ずいぶんと田舎町だな。見た目は地上とあまり変わらない。下が雲だという以外は。
「それで、神はいずこ?」
「あそこの小屋よ。」
小屋。それはただのみすぼらしい小屋だった。これが神の住む家か?
「おじいさま、ただいま帰りました。」
おじいさま?おじいさまってお祖父様?
「お帰り、リリス。そちらの悪魔みたいのはなんだい?」
悪魔って。いや確かに見た目は悪魔だけども。中身はいたって紳士です。
「私の友達よ。」
「そうかい、まあ何もない所だが、ゆっくりしていきなさい。」
僕らは御茶を飲みながら、しばし休憩をした。
「私の母はね、見ての通り神様の家系なの。」
なるほど。
「母は今どこかの国で女神をしているわ。」
ふむふむ。
「母はある日、恋に落ちた。」
ほう。
「でもね、彼は魔王の血筋だった。」
ん?
「私は魔王と女神の子供なの。」
凄い家系だなおい。てことはなんだ。昨日の死に神は父親の差し金か。
「私は魔王を殺すつもりよ。」
なるほど。父親ごろしですね。わかります。
「あなたも協力してくれる?」
キラーパスきたー!魔王と戦うとかむりー!絶対むりー!
「協力してくれるわよね?」
そんな高圧的に言われてもむりー!
「大丈夫、あなたも魔王の血を引いているわ。」
たしかに。いやいやいや騙されないからね。僕はれっきとした人間です。
「さもないと、元に戻る方法を教えないわよ。」
なんてこった。これで僕は一生悪魔だ。そんな脅迫なんてズルいや。それが神様の子供のやることか。
「わかりました。やります。」
「決まりね。ありがとう。」
僕は魔王の血を無理矢理飲まされ、そして魔王を倒すことになった。ここには神も仏もいないのか。目の前にいた。
「とりあえず君はその姿を何とかしないと、天使にころされるぞ。」
なんてこった。天使がころすとか。なんてこった。
「どうすれば。」
「修行じゃな。」
「修行?」
「修行。」
「修行でなんとかなるんですか。」
「角と羽くらいはしまえるじゃろ。」
「なるほど。」
「わしが治してやってもいいが、それでは修行にならんじゃろ?」
(あとがき)ラピュタやらワンピースやら色々な要素を詰め込みながら書いております。まぁ要するに魔王を倒そうとする青年と黒髪乙女の物語です。