の奥、偽善者とうさぎ
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僕が善行をするのは、

存在理由が欲しいからだ。


それは、

一つの役割を演じている

と言ってもいい。


僕は親切心を

持ったこともなければ、

思いやりのかけらを

持ったこともない。


常にあるのは、

誉められたいという欲望と、

自らの存在意義を満たす

ことだけだ。


他者のことなど、

頭の中にはない。



僕はある時、

森の入り口で

不思議なうさぎと

出会う。


そのうさぎは

僕のほうを見て

手招きする。


次の日も、

また次の日も、

うさぎはそこにいる。


僕のほうを見て

手招きする。


僕はそのうさぎに近寄る。


すると、うさぎは

跳び跳ねて

遠くへ行ってしまう。


僕は、うさぎを

追って森の中に入った。



森を奥へ進むと、

道の真ん中に

仮面が落ちている。


道化がかぶるような

目が垂れさがり

下品な笑いをしている

仮面だ。


僕はそれを拾う。


近くで、うさぎが

僕のほうをじっと見ている。


僕はなぜか、

そのお面にひどく

引き寄せられる。


気が付くと、

僕は意識を失っていた。


森の中はすでに真っ暗で、

辺りは星と月明かりしか

見えない。


ふと、右手に持っていた

仮面がないことに気付く。


僕は恐る恐る顔を触る。


顔に仮面がくっついている。


無理にはがそうとするが、

少しも動かない。


だんだん顔の痛みが増してくる。


いったいどうしたというんだ。


僕がなにをしたというんだ。


これが僕への仕打ちだとでも

いうのか。


僕は本当の顔を失った。


うさぎが

僕を見て笑っているように

見えた。





おわり。


(あとがき)とある青年と道化の仮面のお話。設定的にはゼルダの伝説 ムジュラの仮面を意識しながら、日頃自分が感じていた親切心と偽善との境界線をテーマに書いてみました。


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