Wall Graffiti 2
「ねぇおじちゃん」
「…おじちゃん?」
「なにやってるの?」
「あのね、おじょうちゃん」
「うん」
「私はまだ20代後半で」
「ねぇおじちゃん」
「………」
「君は迷子かい?」
「まいごってなに?」
「迷子っていうのは、」
「お家がわからないことだよ?」
「わたしおうちないもん」
「え?」
「ねぇおじちゃん、いっしょにあそぼ?」
彼女と一緒にしばらく歩いていると、
どこかの壁に人だかりができている。
「酷いなこりゃ」
「真っ黒じゃねぇか」
「どうしたんですか?」
「ああ、また例の集団さ」
「例の集団?」
「ああ、あんた新入りかい?」
「最近このあたりで悪さをしている」
「らくがき集団さ」
「見てみろ」
そこには、全てを真っ黒に染められた一枚の壁があった。
「これはもうらくがきなんてレベルじゃねぇ」
「やつらのやってることは違法なのさ」
彼女と歩いていると、彼女が急に立ち止まる。
「どうしたの?」
「わたしのおうちもね、」
「まっくろにされちゃったんだ」
この世界は、全てが壁に囲まれた世界だ。彼女の言っているおうちというのは、つまり彼女の壁のことだ。
「おかあさんとおとうさんはね、」
「あまりにらくがきがひどくて、」
「いなくなっちゃったの」
彼女と一緒に歩いて、彼が家に戻ると、彼はある異変に気付いた。
彼の壁が、真っ黒になっていた。
「そんな…」
「あはははははは」
「誰だ!」
「おまえか新入りってのは!」
「このあたりは俺たちのなわばりなんだ!」
「さっさと立ち去りな!」
episode2 「迷子の少女と黒い壁」
(あとがき)facebookシリーズ第2話。敵キャラをらくがき集団にすることはだいたい決まった。主人公は20代後半。無精髭のせいで若干ふけてみえる。小さな女の子の両親は、アカウントを削除してしまったということ。主人公にロリコン属性はない。はず。