ラキュラ伯爵
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彼は退屈そうな顔をして、りんごをかじっていた。

ここは彼の自慢の城、高層マンションの地上27階である。



「伯爵さま、ワインをお持ちしました。」

「ありがとう。」



現代のドラキュラは、日常に紛れて至るところに暮らしている。

彼はその中でも、富裕層に位置していた。

貧困は、彼のプライドが許さないからだ。



「ところで伯爵さま、今晩の御夕飯はいかがいたしましょう。」

「ああ、今夜も出かけてくる。」



現代のドラキュラは基本的に、レアの牛肉などからエネルギーを摂取しているが、時々人間の血が恋しくなる。彼は満月の夜に、若い娘の血を吸うことに決めている。男の血も吸えないことはないが、吸うなら若い娘の血に限ると彼は言う。


彼はマンションから飛び立ち、大空を舞う。マントが羽の役割を果たしているわけだが、その仕組みは誰にも分からない。ハンググライダーの要領ではないかと、研究者は語る。


彼はとある民家の目の前に降り立つ。辺りに人影はない。彼は玄関を堂々とすり抜ける。それが、現代のドラキュラが身につけたひとつの能力である。熟練した能力者は、あらゆる物質をすり抜けるという。彼も一般的な薄さの壁ならすり抜けられるので、壁からお風呂場に侵入し、キャーのび太さんのエッチーという状況も作れるわけだが、彼はそんなことはしない。なぜなら、彼は紳士だからだ。ただの変態ではないかという声が聞こえてくるが、断じてそうではない。彼は立派な紳士である。だから、彼はいつも玄関から礼儀正しく侵入する。


彼は階段をのぼり、部屋に侵入する。彼はベッドの上から彼女に覆い被さる。そこには、14歳の少女が静かに眠っていた。彼は襟をまくり、彼女の首もとに近づく。



「ん…」



その瞬間、彼はとっさに首をあげる。少女の目が開いている。彼は少女と目が合う。彼女はしばらく彼を見つめ、口を開く。



「あなたはだれ?」

「私は、ドラキュラ伯爵だ。」

「どこから来たの?」

「高層マンションの27階からだ。」





episode.1 「Dracula meets girl.」



To be continued...





(あとがき)はじめてドラキュラというかヴァンパイアに触れたのは、ダレン・シャンという児童書である。中学生の私は、この本を読んで泣いていた。なぜ泣いていたのかはもう覚えていない。とにかく面白かったのである。これを感受性が豊かというのか涙もろいというのかは分からないが、とにかくあの頃の私はまだ純粋であった。もちろん今も純粋である。ただ少し、視点が広くなっただけだ。


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