説家の日常 4
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 連絡があったのは、たしか雨の日だった。午後のけだるい時間に、電話がなる。

「もしもし。」
「はい。」
「夏目さんのお宅ですか?」
「はい、そうですが。」
「わたくし、志村警察署の石橋と申します。」
「・・・はい、どうも。」
「それがですね、本日午後2時ごろ、夏目雅人さんがお亡くなりになりました。」
「・・・はい?」
「ですので、ご家族の方に身元確認をお願いしたいのですが。」
「・・・死んだんですか?」
「・・・はい、残念ですが。」

 息子は即死だったらしい。相手のトラックは飲酒運転で、赤信号に気づかず、息子の車につっこんできたそうだ。
 葬儀は、息子の職場の上司や同僚、友達など何人もの方が来てくれた。孫はずっと、すみの方で泣いていた。当然だ。両親を二人同時に亡くしたのだから。息子の隣には、彼女も一緒に乗っていた。彼女も即死だった。


        ○


 お父さんとお母さんが死んでから、僕はなんだか途方にくれている。僕はまだ小学生だし、人生の進路だってはっきりとは決まっていない。毎日ゲームをすることが楽しみだし、料理や洗濯もあまり手伝ったことがない。朝一人で起きられないし、大事なものがどこにしまってあるかもわからない。銀行だって一人で行けないし、郵便局だって何をするところだかわからない。
 僕は、お父さんとお母さんが大好きだった。怖いときもあったけど、二人ともすごく優しかった。僕のことを、たくさん可愛がってくれた。これから、三人でしたいことがたくさんあった。三人で行きたい場所が、たくさんあった。でも、二人はもういない。僕はいまだに、それが信じられない。どうしても、信じられない。



つづく


(あとがき)誰かが死ぬという物語は、安易に書きたくない。この時の私には、主人公が葛藤する強い動機が他に見つからなかった。そして、物語は後半へ。


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