説家の日常 3
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 僕は勉強が好きだ。僕は、非常によく勉強する。これだけ勉強しているのだから、いつかは宇宙飛行士になれると思う。僕は、星を見るのが好きだ。無数の星を眺めるとわくわくするし、綺麗な月を眺めると、なんだか幸せな気持ちになる。僕にはおじいちゃんがいる。おじいちゃんは僕に、よく小説のすばらしさについて語る。けれど、僕はそのたび、わかったような、わからないような、不思議な気持ちになる。だけど、おじいちゃんが楽しそうに話しているのを見るのは、とても好きだ。
 僕はいつも、世の中を斜に構えたような、ひねくれた目線でながめる。家族は、そんな僕のことを心配する。僕のように世の中を斜め下から見ていたら、どうしても孤立してしまう、という。実際の所、僕はすでに孤立している。しかし、僕は斜に構えた所をうまく隠している。周囲と協調するためには、自分の意見を隠した方がうまく進むからだ。だから、僕は自分自身を隠す。カメレオンのように。


 6月9日は、お父さんたちの結婚記念日だ。お父さんは音楽が好きで、記念日はロックの日がいいと、強引に結婚式の日にちを決めてしまった。お母さんは、「ジューンブライドだから別にいいわ」とその提案に納得してしまった。でも、僕が花嫁だったら、ロックの日なんていやだ。もう少しロマンチックな日がいい。
 毎年結婚記念日には、お父さんとお母さんは二人きりでデートに出かける。これは、結婚してからの二人のしきたりだそうだ。その間、僕は家でおるすばんをする。おじいちゃんと遊ぶか、タマとごろごろするか、おえかきをしている。

 二人はあわただしそうに支度をしている。
「パパー、明日雨だってよー。」
「ああ、そうらしいな。」
「電車で行く?」
「いや、車で行こう。」



つづく


(あとがき)この少年は、森見登美彦氏のペンギンハイウェイをつよく意識して書きました。そして、物語は嵐の前の静けさへ。


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