説家の日常 2
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 僕は、猫である。名前はまだない。つい最近拾われたばかりの、いっぱしの野良猫である。こんななりをしているが、この町の野良猫たちを治める、野良猫たちのボスである。いわば、この町の主なのだ。それなのに、僕はこの家の主人にひょいと捕らえられ、家まで連れ去られてしまった。これでは、この町の主の名がすたる。今こそ、反乱の時。立ち上がれ、戦士たちよ。今こそ、我の元へと集え。

「ねえ、お父さん。」
「どうした。」
「なんだか外がうるさいんだけど。」
「野良猫がけんかでもしてるんだろ。」
「それが、すごい数の鳴き声よ。」
「・・・なに?」

 仕方なく、外へ出てみる。
ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー、ニャー、ニャー、ニャー、にゃー。


        ○


 私の友達は、猫である。名前はまだない。ミケにしようか、ジョニーにしようか、悩んでいる。「ジョニーなどありえない」と諸君は言うだろうが、命名権は私にある。たとえ私の猫を「スネークイーター」と呼ぼうが、「コブラヘッド」と呼ぼうが、それは私の自由だ。しかし、あの猫の本当の名前はタマである。妻がそう決めた。私に選択権はない。なぜなら、私は妻に逆らえないからだ。
 猫をじっと見つめていると、なんだか不思議な気持ちがする。それは、幸せな気分と呼んでよい。彼らは、にらめっこが得意である。彼らは、なかなか手ごわい。じっと目を見つめると、彼らも私を見つめる。しかし、彼らはいっこうに目をそらさない。いつも、私のほうが先に笑ってしまう。笑ってしまうというより、にやけてしまうのだ。彼らの、なんて可愛いことだろう。



つづく


(あとがき)4000字の字数制限をなかなか超えられず、猫の鳴き声で字数調節しようと思いつき、沢山の猫達に登場して頂きました。時々混ざるひらがなは、子猫のものですにゃー。


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