説家の日常
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 そこはひまわり畑だった。夏の日差しの中、満開のひまわりが一面に広がっている。遠くの方に、少女が一人で立っている。彼女は白いワンピースを着て、麦わら帽子をかぶっている。彼女がこちらを振り向く。


        ○


 ピンポーン。チャイムが鳴り、私はそっと筆を置く。小林を迎えるために、妻が玄関へと向かう。時刻は午後四時。約束の原稿は、まだできていない。

「いらっしゃい。」
「ああ、奥さんこんにちは。」
「どうぞ、奥へ。」
「はい、失礼します。」
わたしはリビングで、小林を迎える。
「先生、原稿の方はどうですか。」
「いや、それがまだなんだ。」
「そうですか。読者も期待していますから、よろしくお願いします。」
「うむ。」
わたしはなんだかえらそうに返事をして、威厳を漂わせる。その実、原稿はまだ完成していない。


 私が小説家となって、どれくらいの月日が経つだろう。もう何年も経ったような気がするし、またつい最近のような気もする。しかし、小説家に年齢は関係ないのだから、そんなことはどうでもよい。
 なによりも、私が小説家を志した理由は、私が文章を書いて幸せな気分になるからだ。幸せな気分とはどんな気分かというと、なんだか胸の辺りが熱くなるような気分である。



つづく


(あとがき)学校の課題で、小説を書けという無理難題を出された時に書いたものです。字数制限は確か4000字以上だったか。テーマは憲法ということで、その中から幸福追求権を選び、幸福とは何だろうと考えながら書いていきました。


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