超次元サッカー
「今日帰り遊ぼうぜ」
「いいよ、何して遊ぶ」
「公園で3DSしよう」
彼らは小学生であり、近所の公園で日々ゲームに取り組んでいる。3DSとはニンテンドー3DSと呼ばれる、デュアルスクリーンの立体視携帯ゲーム機のことで、かつては白黒だったゲームボーイは、いまや無線LANで接続できるまでになった。もちろん、画面はカラーである。
「なあ、不思議に思ったことはないか」
「何が」
「イナズマ・イレブンについて」
イナズマ・イレブンとは株式会社レベルファイブが作成したサッカーゲームのことである。ドラゴンボール改と同じ朝9時から夜のゴールデンタイムに変えたところ、視聴率はさらに上がったらしい。恐るべしドラゴンボール。
「いや、別にないけど」
「おかしいとは思わないか」
「たとえば」
「まずバトルがエンカウント制なところ」
「まあRPGよりだよね」
「あと必殺技があるところ」
「まあ敵は殺さないけどね」
「キャッチコピーが超次元サッカーだし」
「まあ後ろに幽霊みたいなのいるからね」
彼らがイナズマ・イレブンについて語っていると、夕暮れのチャイムが鳴り始めた。カラスが空を飛んでいる。涼しい風が辺りを包んでいる。公園の木々は揺れて、もうすぐ梅雨の季節が来る。
「もしかしてさあ」
「うん」
「これって…」
「うん」
「サッカーじゃないんじゃない」
「まあ相手に幻覚とか見せるからね」
彼らはその公園を後にした。誰かが忘れたサッカーボールが、砂場に転がっていた。
(あとがき)
イナズマ・イレブンをほとんど知らないので、Wikipediaとニコ動百科で調べながら書いた。