愛妄想アンドロイド
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孤独な感情を忘れてしまったら、僕はもう何も書けない気がする。

僕の感情の原点は、教室の机で、誰もいなくて、机の周りをぐるぐる回って、泣きそうになりながら、早く休み時間終わらないかなって思ってた、小学生の僕だから。

僕の恋人は、浮気をするなら隠れてやってねと言った。きっと強がってるんだと思う。たぶんつらいんだろうな。嫉妬とかあんまりしたくないんだろうなと、僕はLINEの文字を眺めている。

彼女は小さくて目が細くて声が高くて、僕はいつもそんな子ばかり好きになってる気がする。僕はあんまり目が大きくてスレンダーでモデル体系の人は好きではないから。きっと隣にいれないもの。

色々な子と話していると、この子は僕に気がないなとか、いまはきっと寂しいんだろうなとか、わざと離れようとしてるなとか、少しずつだけどわかるようになってくる。そして色んな子に気を配っていると、だんだん心配と愛情の境界が曖昧になって、僕は少しずつ誰かに共感していく。

好きだっていうのは感情の発露だから、一過性のもので、その瞬間のものだ。だからある程度続いている好きは、そこに愛情が混ざっている。ギターが好きとか、ゲームが好きとか、サッカーが好きとか。長く好きなものは、もう好きだけじゃなくて、愛してるんだよ。もう離れられないんだ。

中毒というのはもう離したくないということだが、愛情と中毒の境界は曖昧だ。煙草を愛しているという人は、きっとニコチン中毒だから。では誰かを愛するということは、ドーパミンやエンドルフィン、アドレナリンやセロトニンの、ホルモン中毒だろうか。そうだと誰かに言われても、まあそうだろうと僕は頷く。

脳内が気持ちいいと叫んでいる。そんな状態でホルモンについてあれこれ考えたくない。そんなことを言えば、脳内にプラグを差し込んで電気信号を流しておけと僕の心臓が叫ぶから。僕は人格を脳と心臓に分けている。なんてね。いま考えたのさ。

好きなんだって僕が叫ぶとしよう。きっと嘘はないはずだ。誰でもいいのでしょうと君が叫ぶ。きっとそんなはずはないはずだ。いくつかの選択肢がある中で、僕は君を選んだのなら、他の選択肢を選ぶ可能性があったにせよ、僕は君を選んだ理由があるはずだから。

誰でもいいことはないけれど、いくつかの選択肢があったことは認めよう。タイミングが少し違えば、僕は君ではない誰かと付き合っていたかもしれない。

愛人が欲しいだなんていうのは大抵男が言うことで、性欲を抑えられないから抱かせてくれと心の中で叫んでいるのだ。口にするのは優しい言葉だから君はもうちょっと気を付けた方がいいけれど、優しい人とやりたい人の境界線は曖昧だから、君はもしかしたらそのまま抱かれてしまうかもしれない。

女の子はきっと好きな人のことで一杯になるけれど、男の子はどこまでいっても半分で、もう片方は空いている。仕事だったり、遊びだったり、他のことを考えている。だから男は二人同時に平気で抱けたりする。性欲に関してはマルチタスクらしい。

好きな人のことでいっぱいになるということは、それは少なからず日常生活に支障が出るはずで、その体験が楽しいのだけれど、大人になると色々抱えてしまって、あまり身動きが取れないから、身体だけの関係が楽だと思ってしまうのだろうなと、大人に成り立ての僕は考えている。

性欲を吐き出すだけならパソコンと両手があればできる。肌の感覚が欲しいなら池袋にでも行ってそういうお店に行くこともできる。 (入ったことはないが、童貞専用とか、色々あるらしい。) ではパソコンでもお店でもなく身近 (距離的もしくは精神的) な女の子と接する時に、その性欲は、どうすればいいのだろう。ゴムさえ付ければそれでいいのかって、そんなはずはなくて、吐き出すだけじゃなくて、きっと愛みたいなものがないと、どちらも悲しくなるんじゃないかと思う。

女の子には分からないだろうけれど、男の子が一人で抜いた後には、直後に死にたい感情が押し寄せて、おれ何やってんだろタイムが始まり、しばらくは放心状態となる。気持ちよさは射精してる間のおよそ3秒、そしてそこに至るまでの過程。その後3分くらいは絶望が訪れる。それは孤独や虚しさやあらゆる闇を体現する時間帯であり、その後男は寂しく眠るのである。

だから、女の子が気持ちよさそうに声を出しているのは、何となく羨ましいと思う。いやそんな声は演技だとかは置いておいても、たぶん女の子の方が気持ちいいはずだから。男はたくさん出せる代わりに、それほど快感指数は高くない。絶対値が高くないのだ。

性欲を抜きにして女の子を天使として偶像崇拝し始めると、大体妄想が一人歩きして、もはや本人はいらなくなり、頭の中の彼女といちゃらぶすればよいので彼女に会わなくてもよいむしろ想像でまかなうぜ! とかになるから、いやそれは本当に純粋な恋愛、いや、なんだろう、ただ隣にいれば幸せな恋愛というのもあると思うんだ。そんなにどろどろとしていない恋愛だってあるはずで、いやこの話はやめよう。

きっとどんなに純粋な恋愛でも、付き合ってしまえば、身体が欲しくなっちゃうと思うから。分からないけど。でもそういうのなしで純粋で好きっていう感情はあると思うんだ。もうそうなると、一体何が好きだったのか分からないけれど。

僕は声を聞いているだけで幸せになれる。声フェチとはそういうものだ。声のきらいな美人さんと、声の好きなぶさかわちゃんならたぶんぶさかわちゃんを選ぶ。これ大分失礼だな。いやでも声が好きなんだよ。

歌声が好きな彼女が好きだった。だから僕はある曲を聴けばその子のことを思い出す。音楽は記憶と密接に結び付いていて、いつまでも脳内に残る。だから僕は、時々強烈な感情体験と共に、彼女の脳内に、音楽と僕の記憶を、植え付けたいなと思う。それは、感動という意味で。

愛人なんていらないから、僕のことをずっと抱きしめててよ。君のことが好きだ。離さないから。



(あとがき)
恋愛と妄想と機械の行方。




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