ダビデは氷帝で100人斬りという伝説を作って帰って来た。当の跡部くんはいなかったらしいが、大きな影響を与えたことには違いない。あれから彼女はダビデの前では良く笑うようになった。始めは良いことだと思っていた。しかしそれがだんだんとおかしくなっていた。気付いているのは俺だけかもしれない。
『ヒカル、昨日帰り遅かったね』
「あぁ、バネさん家でゲームしてた」
『今日はまっすぐ帰って来てね』
「おう」
ただ聞いている分には家族の他愛もない会話なのかもしれない。ダビデも気付いていないだろう。
『明日から私がお弁当作るね』
「いいよ、そんな迷惑かけらんねぇ」
『いいの、家族なんだから気にしないで』
「じゃあ宜しく」
『うん、おいしいの作るね』
『ヒカル、昨日の子友達?』
「昨日?あぁ委員会あったから」
『クラスメイト?』
「うん」
『へぇ、可愛い子だね』
「そうか?」
『ヒカル、今朝の電話誰だったの?』
「剣太郎から、今日はミーティングだけだって」
『そう、じゃあ一緒に帰ろう?』
「悪い、今日浜行く予定」
『着いてって良い?』
「見てるだけじゃ楽しくないだろ?」
『それでも良いの』
日に日に彼女は俺達と行動を共にするようになった。いや、俺達というよりは、ダビデに。漸く彼女の本性が見えてきた。ああ、彼女も俺と同じだ。
「ねぇなまえちゃん」
『何?』
放課後のふたりっきりの教室。日直で俺は黒板を消し、彼女は日誌を書いている。
「君は俺と似ているよ」
『突然どうしたの?』
「よく似てる」
『可笑しなことを言うのね』
似てるからこそ良くわかるんだ。
「依存症、だろ?」
『え…、』
「気付いてないわけ、ないよね?」
『どうして…?』
「見てればわかるよ」
言っただろ?よく似てるって。