『戻ったけどさー、結局はあんまり変わんないんだよね』

「でも雰囲気柔らかくなったよ?」

『そーか?あ、亜久津吸うなよー吸いたくなるだろ』

「あ?」

「南に言われて禁煙中なんだってさ」

『もは!てめ!こっちに吐いてんじゃねえよ!』

「あっくん、俺がいること忘れないで」

「……先輩達何やってるんですか」


室町だ。珍しい。気が向かないから保健室どーのでサボったらしい。ちなみに私の膝の上には千石、私は亜久津の肩に頭を預けていて、亜久津は片膝立てて煙草を吸っている。端から見れば異様な図だろう。







「結局先輩達の関係って何なんですか?」

「なにって言われても、俺はなまえの愛人だしー」

『ばかもの、万歩譲って顔見知りだ』

「ぐすん、キヨ泣いちゃう」


二人してけたけた笑う。亜久津は無言ですぱすぱ。この関係も嫌いじゃない。


『あれだ室町、腐れ縁』

「えー?腐ってんの?」

『防腐剤入れ忘れたんだよ』

「においがつかないむしゅーだ♪」

『それ防虫剤』


げらげら。室町のため息。こう見ていると、私たちのくだらない冗談にただ無言でいる亜久津はツワモノなのかもしれない。いや、単に慣れなのかもしれない。


『でもさ、うちらってあれじゃない?』

「どれ?」

『親友よりは深いよね、家族とも違うし』

「んー分かる分かる」

『絶対にここの縁は切れないよね?私、二人と縁切れたら魂抜ける気がする』

「俺もー、そういう意味では恋人の南よりは近いよね」

『そうかもなあ』


室町のため息が止まらない。なんでだ。聞いてきたのはそっちのくせに。亜久津はいい加減煙撒くのやめろ。







「南先輩は心配にならないんですか?」

「ん?なにがだ?」

「みょうじ先輩が亜久津さんや千石さんと仲が良いの」

「んー大丈夫だろ」

「だからなんでですか」

「俺がみょうじと知り合ったときにはもう三人一緒が普通だったからな、あいつらはお互いが支え合ってんだよ」


それにあいつの交友関係は、俺がどうこう言うことじゃない。そう言った南先輩は大人だと思う。


「で?」

「はい?」

「お前がそういうこと聞いてくるってことは、そっちで何かあったんじゃないのか?」

「な!よ、余計なお世話です!」

『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!面白そうな会話が聞こえてきたぞ』

「で、どうなんだ?」

「ほっといてください!!」


まったく、油断も隙もあったもんじゃない。駆け出した後で振り返ってみる。そう言えば二人のカップルらしいところを見たことがない。そして俺は振り返って後悔することになる。

あの人たちはコートのど真ん中で何やってるんだ!

カップルらしいところを見ていなかったのではない。自然と自分が見ることを避けていたんだと確信した。とりあえず赤くなった顔を冷やしに行こう。


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