スクリーンに本番前や本番中のことが流れると更に沸いた。それでも私も柳もミノムシ状態だったので、キングが茶化す声と周りのどよめきが耳に入る。

ツンツンと脳天をつつく幸村に反撃もできない。赤也がなんだかんだ言って柳につっかかってるのも聞こえない。

どうやら一部始終をスクリーンに映し終えたらしい。キングが壇上にあがって来いというが、こんな状態で行けるはずがない。必死で幸村の足にしがみついていたのに、突然の浮遊感。


「柳もみょうじも、往生際が悪いよ?」


幸村が魔王に見えた。







『失神しそう』


真田にひっつかまれてキングの元に連行されている間も茶化す声は増すばかり。壇上に放り投げられれば、そこにはにやにやしているキング。


《さぁ皆さん、ベストカップル賞の2人に賞品授与でーす!学食のタダ券30枚!そしてー!》


もうなんでもいいから早くしてくれ。


《今年の修学旅行先は関西!2日目のタクシー研修、なんと2人にはタクシーの代わりに人力車をご用意しまーす!2人で楽しんでらっしゃい!》

『これ以上恥を晒せと!?』

《しかーし、タダでこんなの上げるの勿体無いと思いませんかみなさん!》


人の話を聞け!


《じゃあみんな俺と一緒に!せーのっ!きーす!きーす!きーす!》


呆れて物も言えない。







『柳もなんとか言……なにその開き直った顔』

「もう面倒くさくなった」

『え、嘘でしょ、ちょ、タイムタイム!』

《きーす!きーす!》

『お前は黙れ!』

「みょうじ、さっさと終わらせてしまった方が楽になれる」


それもそ、いやいや、何言ってんの柳さん。


『まっ、本当に待て!』


私の必死の静止の声も聞かず、柳はこちらに近付いたかと思うと、そのまま通り過ぎてキングのマイクを奪った。


「俺はこいつの照れた顔を見るのは好きだが、俺以外には見せたくはない、だから俺達のことはそっとしておいてくれ、その代わりと言ってはなんだが…」







キングに彼女が出来たらしい。


柳の言葉にスクリーンにでんっと別の映像が映った。

慌てふためくキングがマイクを奪い返してぎゃあぎゃあと撮影部隊に文句を言っているが、ギャラリーは映像に釘付けのようだった。それもそうだろう、


「みょうじ、今の間に行くぞ」


頷いてそそくさと壇上から逃げた。

しっかしまぁ、


『本番中に、しかも舞台上で何やってんだアイツ』


舞台で町娘たちが踊っている間に女王役の子に告白していたなんて。


「俺達も人のことは言えないがな」


にやりと笑う柳をぽかりと叩いて校舎に走った。


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