ウェイターが板についてきたのか、おやつ時を過ぎる頃には私までもが朝の幸村のように追い掛けられるようになってしまった。おかげで自由時間だというのに校内を回るどころか、厨房から出られなくなってしまった。
『ブン太ー』
「……ちっ」
今はこうして厨房担当のブン太がつまみ食いしないか見張っている。同じ境遇の赤也も、先程までは私の膝で寝ていたけれど、あまりにもブン太が飾り付けるパフェがおいしそうで涎が……うん、まあ、あの、ごめん赤也、悪気はなかったんだ。それで今は大人しく椅子を繋げて寝ている。
『おやつ食べたーい』
「さっき食っただろぃ」
『……あれは食べ物じゃない』
「な!悪かったって言ってるだろ!それに食うなっつーのになまえが食うから」
ジャッカルが失敗したロッククッキーはその名の通りロックだった。まじで歯が欠けるかと思ったよ。
現在のホール担当は柳、柳生、真田。お客さんが縮こまってないか心配だったけれど、意外にも好評らしい。すべては柳生のお陰だろう。
『今頃女バレの男装喫茶に行ってるはずだったのに』
「こっちに貢献しろよぃ」
平部員たちがほくほく顔で帰って来る度、恨めしそうな顔をしていると、自然に焼きそばやフランクフルトに綿菓子、更には水風船や金魚まで。
「なまえ先輩……」
『言うな赤也、絶賛後悔中だ』
「……手伝います」
『ありがたい』
集まりすぎた食べ物を赤也と並んでもっきゅもっきゅ頬張る。おいふぃね、ふぉーへすね。そんなやり取りをしながら賑わう校庭を見ていると、ずっしりと背中に重みがかかった。
「お前ら俺の目の前で食うなよぃ」
『背中向けてるじゃん』
「行き場がないんすもん」
「腹減ったー」
さっき自由時間で食べ歩きして来たくせに。サボりは幸村に言いつけるよ。あ、
「丸井、何をしている!注文が溜まっているぞ!」
「わ、でかい声出すなよ真田」
ははん、良い気味だ。もっきゅもっきゅ。あ、このたこ焼き美味しい。これくれた子、次の練習のときドリンク濃いめにしてあげよう。もっきゅもっきゅ。赤也のもじゃもじゃが首筋を掠めてむず痒いと思ったらいつの間にかフライドポテト口一杯に頬張ったまま寝てた。可愛いヤツめ。
その後、自由時間を終えて帰ってきた超絶不機嫌な幸村に蹴り起こされるなんて夢にも思っていないだろう。