空気がうめー。今日も朝から屋上ですぱすぱ。うめー。長かった髪がなくなって首元がすーすーする。不意に扉が開いて、そこにいる人に驚いた。
『南?珍しいこともあるもんだ』
「お前はまたサボりか」
『日課だから』
「さっき千石が探してたぞ」
『うぜー』
スポーツマンに煙は向けられない。点けたばかりのそれをコンクリートに押し潰した。
「お前は不良の癖に妙に正義感あるよな」
『うるせーよ』
「昨日どうだった?」
『どうって』
「日吉に家まで送ってもらったろ?」
『あー結構家近かった』
「そうじゃなくて」
『何期待してんだよ』
「バレたか」
南には言ってやんね。昨日お礼にって礼のブツやったら顔真っ赤にして逃げやがった。初な反応だなぁと微笑ましく思ったもんだ。
『早く彼女作れよー』
「またそれか」
『うちらの世話なんてほっときゃ良いのに』
「そしたらお前らもっと来なくなるだろ?」
『お人よし』
「褒め言葉だな」
『南の彼女、どんな子だろーな』
「さあ、前の彼女には敵わないだろ」
『そりゃそうだ』
笑い声が空に消える。寝転んだコンクリートからひんやりと冷たさが伝わってきた。
『懐かしいなー』
「まだ半年前だよ」
『そうだっけか』
半年前もこうして二人、他愛もない会話をしながら屋上に並んだ。間柄は今より親密だったけれど。
「お前も早く彼氏作れ」
『お前以上に良い男が現れたらな』
「俺以上に良い男いないだろ」
『うわ、氷帝の部長みてぇ』
「やめてくれ」
やっぱり南の隣は心地良い。二人で並んで寝転び空を見上げる。
『なんでテニス部に入れた?』
「気まぐれ、かな」
『ふーん』
「ちゃんと出る気になったのか?」
『昨日の試合見て頑張ってんだなーとは思った』
「へー珍しい」
『だからって出ないけど』
「はは、いつものことだろ?」
二人笑い合う時間。久しぶりの感覚に、今は身を任せよう。