「山吹て女のマネおったやろ」
『なんで知ってんだよきもい』
「あの子だけ毎回長ジャージ履いとんや、気になってしゃーないわ」
『この変態なに考えてんだきもい』
「語尾にきもいって付けんで」
『無理きもい』
そんな目で見られてたのか。もう長ジャージしか履けねぇ。
「みょうじ先輩は寒がりですから、ね!先輩」
だだだだーん!お前何バラしちゃってんのぉお!見てみろ氷帝メンツが固まってんぞ!特に日吉!あいつ魂抜け掛かってんじゃん!生きる屍になっちゃうから!
「日吉ってば女の子に負けたのか?」
『てめおかっぱ!日吉の脱魂煽ってんじゃねぇよ!』
「おかっぱじゃねぇ!」
『うるせぇええ!』
「自分が山吹の女マネやったんか!通りでええ匂いや」
『ひい!擦り寄ってくんなきもい!』
南と宍戸がいて良かった。危うく私も眼鏡に殴り掛かるとこだった。今日は普通のテニス部員のはずだったのに。
悪いことっつーのは重なるもんで、そのあとは以前亜久津に喧嘩吹っ掛けて来た奴等に喧嘩売られた。どうやら私の顔が覚えられてたらしい。売られた喧嘩は買うしかねぇ。これくらいの人数軽いと思っていたら不意に手を引かれた。振り返ればきのこ、じゃない日吉。
『何だよ邪魔すんな』
「あんた女だろ」
『だから何だよ』
「ここは俺がやる」
ふざけんなお前が相手できんのかよ。とか思っているのもつかの間。日吉は得意の武術で綺麗にいなしていく。すんげー。そして日吉の一言に、不覚にもときめいた。
「女は男の後ろで大人しく守られてれば良い」
終わったときにはみんなで拍手ものだ。案の定店からは追い出された。氷帝のやつらには女番長だなんだ言われたけど、こいつらもなんだかんだ楽しそうだ。さっきまでびびってたくせに。良いダチができたなぁ。
「またな!今度はダブルスしようぜ」
『目の前で飛んだら叩き潰してやる』
「気ぃつけて帰れよ」
『おうあんちゃん』
「今度生足見せてな」
『きもい』
「………」
『おいー!日吉も何か言えし』
「……喧嘩はやめてくださいよ」
『んー無理』
「…………」
『極力努力します』
無言の威圧には勝てなかった。