伴爺が今日のオーダーを読む。ダブルスは南・東方ペアと新渡米・喜多ペア。千石、亜久津、室町と私はシングルスか。対戦相手は正直普通の奴なら誰でも良いや。
どうやら私の対戦相手はつり目きのこヘアーの彼らしい。伴爺いわく、面白い構えらしいけど、亜久津みたいなもんなのか?
ダブルスも終わって、いよいよシングルス。ダブルスは一勝一敗。青帽子の彼のペアは中々良いコンビだと思う。おかっぱと眼鏡の方は何か癪に障る。いちいち欝陶しい。
気を取り直してシングルス。まずは私の試合からだ。相手もあまりやる気がなさそう。私も早く終わらせて帰りたいよ。だからって負けてやんないけど。
『よろしく』
「あんた弱そうだな、即席部員なんじゃないのか?」
『てめぇのっけからうぜぇな、ダチ少ねぇだろ』
「…………」
『…………』
馬鹿野郎と言う南の声が聞こえる。あ、ここでは不良な一面は見せない約束だったっけ。まあ良い。本性出した方が戦いやすいし。
『んじゃ、始めっか』
「…下剋上だ」
相手の構え、古武術と言うらしい。伴爺がわざわざ教えてくれた。知ったってどうしようもないけど。
「みょうじ、本気出しなよ」
『千石うぜーまじ帰れ』
「酷いよー!」
『はいはい』
「て、そうじゃなくて!」
『わかったわかった』
今度はちゃんとやりますよ。両手につけたパワーリストを外す。ああ軽い。
『日吉っつったっけ?』
「?」
『全力で叩き潰してやるよ』
「ゲームセットウォンバイみょうじ、6-2」
息切れしている相手に近寄って握手を交わす。始めに見た生意気そうな顔は面影もない。ここにもまた、いた。
「みょうじ…さん」
『何?』
「いつかあんたを倒してやる」
『楽しみにしてるよ』
「下剋上だ…」
倒してやる、その台詞を聞くのは何人目だったかな。自然と口角もあがる。
ベンチに戻れば南が珍しく興奮した様子だ。なんだよきもい。
「お前そんなに強かったのか!」
『いや、そんなってどんなだよ』
「マネにしとくの勿体ないな」
「「え、」」
あ、日吉と青帽子の彼が固まっている。どうやら今の会話が聞こえていたようだ。まあ私には支障ないし。
「俺はマネージャーに負けたのか…」
「相手がたまたま強かっただけだって」
「だけど今マネージャーって」
「うじうじすんな若!激ダサだぞ」
「………はぁ、」