やってきました氷帝学園。なんかいやーな学校だ。いかにも坊ちゃんですって感じがカンに障る。あーやだやだ。さっさと終わらせて帰りたい。それにしても、
『千石、じろじろ見てんじゃねえよ』
「いやー、本当に男の子になっちゃったね」
『うるせぇ』
サラシ巻いて髪切っただけで男に見えるなんざ知りたくもなかった。千石もこの姿には負けると言っていた。なんだ、私は男になったらモテモテなのか。ちょっと嬉しいじゃんよ。
「来たな千石」
「やぁ跡部くん、久しぶり」
あの派手なヤローは何だ。うちにはいないタイプだ。まだ亜久津の方が可愛いげがあるぞ。いつの間にか怪訝な目で見ていたらしい。ばっちり目が合った。え、なんだよ。
「誰だ?こいつ」
「うちの新しい部員、みょうじクンだよ」
『……どーも』
「ハッ、上等じゃねぇの」
………何が。ああもう本当帰りてぇ。振り返れば後ろには壇がいた。くそう、誰だよここに置いたの!亜久津まで逃げようとしてんじゃんか。てめぇだけ逃げようなんざ許さん。がしりとジャージを掴むと上からチョップが降ってきた。超いてー。
「うっわ侑士、あいつ亜久津にチョップくらってんぜ」
「ほんまや……案外タフなんやな」
氷帝との挨拶もそこそこにアップを始める。綺麗に整備されたコートはどこか落ち着かない。気を抜いてぱこんぱこんと打ち合う。今日も室町と。ふと視線を感じて横を向けば羊みたいな頭のヤローがずっとこっちを見てた。何か用か?まあ良い、ラリー終わらせよう。
『室町、これ取れなかったら明日の昼奢りな』
「え、ちょっと!」
つー、と綺麗にネットに沿って落ちたボール。ボレーは得意中の得意だ。明日の昼飯は室町の奢りだ。南に言っておかないと。
休憩に入ろうと思えば視線の主が近寄って来ている。それも目を輝かせて。
「すっげーすっげー!今の何!」
『え、お前だれ』
「俺芥川慈郎!今のどうやったの!」
『ちょ、落ち着け』
「慈郎!他校に迷惑掛けんじゃねーよ」
「だって宍戸も見ただろ?今のボレー!まじで綺麗だった!」
興奮の元はそれか。じゃあこいつもボレーが得意なタイプなんだろうな。どうでも良い。私は早く休憩したい。青帽子の彼が羊くんを引っ張ってってくれたお陰でやっと落ち着いた。後でお礼言っとこう。