久しぶりにちゃんと授業に出ました。だるかったのでもう帰ろうかと思っていたら彼に会いました。
「みょうじ」
『南か、なに?』
「課題、今日もサボったのか?」
彼は南健太郎。テニス部部長だが地味な顔立ち。地味ーずと言うらしい。しかし中々に強いらしい。へぇー。彼のクラス担任はうちのクラスの社会担当だ。課題出されたってやるはずないのに。
『南ー』
「ん?」
『腹減った!』
「またか、仕様が無いな」
南は優しいからいつもご飯を奢ってくれる。しかもAランチ。超リッチ。奢らせといて何だけど、私は南の将来が心配です。悪い女に引っかかってとことん貢がされんじゃないかな。良い父ちゃんになりそうなのに。
『南、お前残念だな』
「唐突に何だよ」
優しいし良い奴なのに。笑えばそこそこ格好良いと思う。
『なーんで彼女出来ないかね』
「それはあれだよ」
『なにがあれだよ』
「俺はお前らの世話で忙しいからな」
『生意気言ってんじゃねえ』
くは、と笑う南はやっぱり部長らしい寛大な心を持っていた。良い奴だ。良い奴なんだけど、勿体ないよな。私たちの世話で彼女出来ないのか。まぁだからって、迷惑掛けるのも止めないけど。ああ、残念だ。
久しぶりに部活にも出た。私と亜久津は所謂幽霊部員と言うやつで、亜久津は伴爺に言われないと出ないし、私だって壇に引っ張られなきゃ出ない。今日は愛車に跨がったところで壇に見つかってしまった。まったく、今日は厄日かもしれない。
「みょうじ先輩!今日も来てもらうですよ!」
『あーはいはい、わかったから引っ張るな』
「早くしないと始まっちゃうです!」
私はどうやら彼、壇太一のようなタイプの人間に弱いらしい。潤んだ目で見られるとどうも強くでれない。それは亜久津も同じみたいだ。
「よし、今日は亜久津もみょうじも来たな」
『なんだよ南、早くしろー』
「チッ」
「早くするから二人共睨むなよ」
「南先輩、千石さんがいません」
「なに?今度はあいつか…室町、」
「はい」
南も苦労するな。千石は大方ナンパにでも行ってるんだろ。生きがいらしいし。毎度探しに行く室町も大変だ。でも早くしないと帰っちゃうからなー。がんば室町。