山吹中3年3組学級委員長のみょうじです。学級委員とは言っても私はどちらかと言うと亜久津くん寄りの人間ですので、委員会ではかなり浮いた存在です。そんな私がなぜ学級委員長になったのか、不思議に思いませんか?それもこれも、千石のヤローのせいでして…奴とは3年間同じクラスの腐れ縁です。その千石のヤローが私を更正させるためだとかなんとかで無理矢理学級委員長にさせられました。そんな学級委員長は今日も1時間目から屋上でお昼寝の真っ最中です。
「おい」
『なに』
「ライター貸せ」
『ブレザーの胸ポッケ』
私の胸元を漁っているこの男は亜久津仁。彼もまた3年間同じクラスの腐れ縁。彼とは不良仲間でもあり、わりと仲良くさせてもらっている。て、どこ触ってんだこのヤロー。
『発情してんじゃねぇよ餓鬼』
「あ?」
『うぜー』
寛げられた胸元に風が入り込んで寒気がする。煙りが鼻を掠めた。かぎなれた臭いに安心する。流れに身を任せていると、不意に屋上の扉が開いた。
「あー!ちょっと何やってんの!」
「チッ」
『うぜー奴が来た』
「2人とも酷いよー!」
オレンジ頭が眩しい。こいつが千石清純。ぷんすか怒りながら近寄って来る。亜久津も気分じゃなくなったのか、漸く上から退いた。
千石も授業に私たちがいないから腹痛だなんだ言って抜けて来たらしい。毎日そんな感じ。3人で屋上に並ぶ。何をするでもなく、ただ呆然と時間が過ぎるのを待つのだ。
『あ、今日数学さぼったら追試だ』
「みょうじは次の授業出るの?珍しいね」
『うるさい』
「亜久津は?」
「帰る」
「じゃあ俺はー」
聞く前に2人して立ち上がる。また千石がぷんすか言っている。
「聞いてくれても良いじゃーん」
『お前うざい帰れ委員長命令』
「こんなときだけ委員長なるのずるいー!」
「けっ」
「亜久津も何とか言ってよ」
「帰れ」
「ちょっとー!」
歩き出した私たちを慌てて追いかけてくる。私は教室に、亜久津は帰路に、千石は……どうでもいいや。どうせ放課後にはみんな揃ってテニスコートにいるんだろう。断ち切ろうとも切れぬ腐れ縁。ああ、面倒だな。