▼室町/幼馴染 折角のお休みだというのに、伊助は用具倉庫の汚れが気になるからと朝から掃除をしているらしい。部屋を訪ねたら庄ちゃんがそう言ってた。 きっとお昼を食べるのも忘れちゃうよと聞いて、私はその足で食堂へ向かう。 『おばちゃーん、おむすび二つ、あ、やっぱり三つ!お願いしまーす!』 竹の水筒にお水を入れながら、おばちゃんと少し世間話をする。今日も一日洗濯物がよく乾きそうね、とってもお掃除日和だよ、なんて話して、おむすびと水筒を手に足取りも軽く用具倉庫に向かう。 途中しんべヱに狙われたおむすびだけど、ちゃんと用具倉庫まで持って来た。 『伊助ー!お昼にしよー!』 「なまえちゃん?」 『おばちゃんにおむすび作ってもらったの』 「ありがと!きりの良いところまでやっちゃうね」 『手伝うよ!それより先に』 懐から手拭いを出して、きょとんとしている伊助の鼻を拭う。 『よし!綺麗になった!』 「また汚れちゃうかもよ?」 『そしたらまた拭ってあげる!』 ふふふ、と顔を合わせて笑って、前よりも随分綺麗になった用具倉庫をもっと綺麗にする。 伊助の綺麗好きはとことんまでだからたまに困ってしまうこともあるけれど、綺麗になったところを見ると心まで綺麗になった気分になるから、きっと伊助の心はとっても綺麗なんだと思う。 塵を集め終えて、ぐぐっと伸びをする伊助を促して、いつもより遅い昼食。 外で食べるのも中々いいものだなと、おむすびを手に宙を仰ぐ。 「そういえば、前にもこんなことあったね」 『ん?』 「ほら、忍術学園に入る前に」 『ああ!あのとき!』 「なまえちゃんが初めて作ってくれたおむすび」 『転けて泥おむすびになっちゃって、ずっと泣いちゃって』 そうそう、なんて笑い合う。 懐かしいなぁ、あのときはたしか、伊助の両親が私の泣き声を聞いて落ち着かせてくれたんだっけ。 「また、さ」 『うん?』 「また、作って来てよ、今度は転ける前に助けてあげるから」 『ふふ、転けること前提なの?』 「なまえちゃんはおっちょこちょいだもん」 『ちゃんと受け止めてね』 「もちろん!」 思い出すのは歪なおむすび。おばちゃんに教わらないと。 最後の一口を飲み込んで、掃除再開! |