▼現パロ/新婚


控えめに鳴る目覚まし時計に体を起こす。隣の寝坊助はまだぐっすり。いつもどうして起こしてくれなかったの、なんて言われるけれど、あまりにも気持ち良さそうに寝ているから今日もそのままにしておこう。

前髪をそっと掻き分けて軽く唇を押し当てる。







僕が朝のほとんどの支度を終わらせてコーヒーを片手に一息吐いた頃、ドタバタと慌ただしい音が近付いてくる。


『庄ちゃんまたずるした!』

「おはようなまえ」

『……おはよう、ごはんすぐ作るね』

「ゆっくりでいいよ」


ぴょこんと存在を主張する寝癖ごと頭を撫でれば、むっすりした顔はすぐに笑顔に変わった。だけどすぐにはっとしてまたむっすり、僕の頬を軽く摘まんで言う。


『次ずるしたら行って来ますのちゅーはなしだからね!』

「それは困るなぁ、僕の一日の元気の源なのに」

『もうっ!』


ころころ表情が変わって面白い。







ふんふーんと鼻歌を歌いながらご機嫌な様子でフライパンを返すその背にそっと近付く。シンクに空のマグカップを置いて、両腕で細い腰を抱く。


『しょっ、庄ちゃん!!』

「なぁに?」


項に残る痕に1つキスを落とせば、ふるふる震えて涙目で見上げる。

あ、だめだ。むらっとした。

理性と本能の天秤がぐらぐらと揺れるのにも気づかない彼女は、沸騰する鍋に気を回す。


「ねえなまえ」

『どーしたの庄ちゃん、今日は甘えんぼさんだね』

「……、」


ぐっと理性で本能を押さえつけて、今日はスクランブルエッグがいいな、と絞り出した。







「明日はお休みだから、今日は早く帰って来るよ」

『うん?乱太郎たちと飲み会じゃなかったの?』

「今回は断ることにしたんだ」


首を傾げるなまえは何も分かってないけど、今はそれでいい。帰って来たらイヤってほど分かってもらうから。

僕が朝からこんな不埒なことを考えているなんて微塵も思ってないだろうな。


『庄ちゃんおかわりいる?』

「うん、もらうよ」

『ふふ、なんだかご機嫌だね』

「今日を乗り切れば週末だから、頑張ろうと思って」


いろんな意味で、ね。


×
「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -