▼室町+5同級生


今夜は満月。空を遮る雲もなく、星が降ってきそうな夜空だ。酒盛りを途中で抜け出して長屋の屋根に登れば、また少し月が大きく感じた。

隠しておいたとっておきの酒を懐から出して月見酒といこうとすると、今夜の見張り番だったらしい団蔵が不機嫌そうな顔で隣に立った。


「くのいち教室も宴会か、くそ」

『その調子じゃ忍たまも?』

「ん、……俺の前で呑むなよ」

『じゃああっち行けばいいじゃん』

「やだ、一人は寂しい」

『もうなんなの』


ぐりぐりと肩に頭をなすりつけられて呑むのを阻止される。この若旦那、年々甘えたになってないか。


『見張り番でしょ?』

「うん」

『まあこれくらいなら及第かな』


懐に入れておいたおばちゃん特製のおむすび。


『半分ずつね』

「あー!」

『……その口はなに』

「食べさせて」

『おとなしく受け取るのと口に目一杯押し込まれて窒息するのとどっちがいい?』

「ごめんなさい 」


おとなしく受け取って食べるのをしばらく眺めてから、月を見上げる。


「月が眩しいな」

『良い夜だよ、奴さんも来やしない、これで酒が呑めればなぁ』

「……」

『分かった分かった、また次にする……この一杯だけ勘弁してね』


お猪口をぐいと煽ると、月を遮る影に飲み込まれた。


「ん、」

『ふ、んー!』

「、は」

『っ、馬鹿!』

「んまかった」

『土井先生に言ってやる、見張り番なのに飲酒してましたって』

「やめてください」


固いお腹に一撃入れると私の手のほうが痛かった。踏んだり蹴ったりだ。まったく。

わははと笑う団蔵が憎らしくて、今度は私からぺろりと食べてやる。


「あー、早く明日になんねーかな!」

『なんで?』

「なんでも!」


ぐりぐりと押し付ける頭をわしゃわしゃと撫で回して、月を見上げた。


『明日は晴れかな』

「ん、」


当たり前ではない明日に思いを馳せて、今夜は甘えたな若旦那の話し相手になってやろう。二人で迎える明日も良いものだ。


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