また一年、ホグワーツでお世話になる!
意気揚々と大広間に入って、ひぃっ!と悲鳴をあげることになるとは思いもしなかった。
教員席でスネイプ先生と、傷だらけの新しい先生の間にいるなまえ先生。その先生の後ろにいる半透明の彼は、私が昨年散々な目にあった元凶だ。
ダンブルドア先生がディメンターのことや、新しい先生のこと、なまえ先生が魔法薬学助教授から闇の魔術に対する防衛術の助教授になること、いろいろと耳に入れはしたものの、するりするすると抜け落ちていく。
「ねぇジニー、あれってもしかして……」
「ええハリー、もしかしなくてもそうよ」
私達の視線は彼に釘付けだし、彼も分かっているのだろうけどこちらを見ようともしない。
時折なまえ先生が振り返って彼に話し掛けるたびに心臓が跳ねた。
「先生っ!なまえ先生!」
『どうしたのジニー、何か分からないことでもあった?』
「いえ、その……」
ちら、と授業の間も先生の側を離れようとしなかった彼に視線をやる。
彼のことを知らない同級生たちは、新しいイケメンのゴーストがなまえ先生にご執心だと囃し立てていた。
『ああ、説明するの忘れてた』
先生のお気楽すぎる答えに肩の力が抜けた。
『リドルね、もう力無いのよ、ずっとこのまんま』
「誰かさんが失敗してくれたお陰でね」
『私の側から3メートルも離れられなくなっちゃった』
つまり……?
『リドルは私の魔力がないと消滅してしまうの、だから誰にも危害は加えられないし、乗っ取ることもできない、ただのゴーストと一緒よ、安心して?』
どうして消さなかったの、と聞いても先生は、彼の知識は今消してしまうには惜しいもの、と笑っていた。
先生は心が広すぎる。
でも先生が側に置いているなら、そう思って彼を見たけど、やっぱりあの紅い目は好きになれそうにない。
安心して部屋を出た私には、その後の先生と彼の話は聞こえなかった。
「教師が嘘ついていいの?」
『どうやって説明しろっていうのよ、リドルが消えたら私も死んでしまうって正直に言えばよかった?』
「さぁ、僕は心が欠如してるらしいから分かりかねるな」
『……いっそ私もホグワーツのゴーストになりたい』
「冗談はよしてくれ、僕まで巻き沿いじゃないか」
『あなたはすでにホグワーツのゴーストよ、おめでとう』
「まったく嬉しくない」