神秘部での戦いは壮絶を極めた。騎士団が参戦し、そこは死の呪文や服従の呪文が線を描くように飛び交う。
赤い閃光を屈んで避けようとすると、体をぐいと引かれて、死喰い人に失神呪文が当たった。
「なまえ、先生…?」
『しっかりしなさい!』
先生はそう言うと、シリウスの背を足場に飛んで、ルーピン先生を狙う死喰い人の杖を奪う。
「なまえ!踏むなよ!」
『うるさいわね!』
「っハリー!」
それは一瞬だった。
そして同時に、酷く長い、長い一瞬だった。
『「ッシリウス!!!」』
ダンブルドアが現れて形勢逆転。だけど僕はベールの彼方に消えたシリウスと、それを追うように消えたなまえ先生が気掛かりだった。
ベラトリックス・レストレンジの放った死の呪文がシリウスを射抜く瞬間、靄が掛かった気がしたのだ。淡い淡い靄。そしてそれはなまえ先生のロケットから出たようにも見えた。
何かの見間違いだったかもしれない。だけどもしも、もしもの可能性があるなら、そう望まずにはいられない。
魔法省内部で起きたこの出来事に、魔法省はようやくヴォルデモートの復活を認めたけれど、それはとても遅すぎた。
「なまえ先生は……無事かしら…」
「きっと、無事だよ……」
ーーどこかの森の奥深く
『……レギュラス、貴方なのね』
ロケットについていた青の宝石が、今はくすんで輝きを失っている。きつく、きつく握りしめて、心の中で何度もその名を呼んだ。
「なまえ、」
『リドル……』
「彼、なんとか生きてるよ」
浅い呼吸を繰り返す、未だ目覚めない彼に似た黒髪を撫でる。
『あなたの髪は、少し癖が強いわね……』
「なまえ、そろそろ」
『えぇ、』
頬を伝う涙をぐっと拭って、黒のローブを翻す。
そこに残る少しの足跡も、降り出した雨が掻き消して行った。
戦いはまだ、始まったばかりだ。