私は目の前の光景を信じられないでいる。
「リーマス!なまえ!」
「『シリウス!』」
どうして、どうして先生達が、あのシリウス・ブラックと抱き合っているの?先生は、なまえ先生は……、
「なまえ先生も、グルだったの…?」
ハリーの声が震えている。だって、嘘よ!先生はいつも、いつだって私達を守ってくれた!
「母さんに聞いたことがある、シリウス・ブラックとなまえ先生は……婚約者だったって」
「それが今も有効ならどれだけ良かったか」
『やめて、それは私のせいじゃない、それより今は』
「ああそうだ、あいつはどこだ?」
私は絶望に震えていた。
でもそれは安堵に変わりつつあった。先生達が嘘を吐いているかもしれない。だけど、目の前でスキャバーズが、
「なまえ・みょうじ、ホグワーツのマドンナ!みょうじ家のご令嬢!私にも慈悲深い心を、」
『お忘れかしらミスターペティグリュー、私は冷徹非道のスリザリン生よ』
「う、」
『私はあなたのこと、信じてたのに』
つぅ、となまえ先生の頬に涙が一筋伝った。
それからは早かった。ペティグリューを捕まえ、憤るなまえ先生とハリーをルーピン先生が抑えて、私はぎゅうとクルックシャンクスを抱きかかえているしかなかった。
『誰がセブルスを運ぶ?じゃんけん?』
「勘弁しろよ、引きずっていけばいいだろ?」
『なんでそんなに不機嫌なの』
「シリウスはなまえが今もセブルスと仲が良いのを妬いてるんだよ」
「違う!」
「違わない」
もしかしてなまえ先生とスネイプ先生は……、と想像して鳥肌が立った。
『安心してハーマイオニー、私と彼はそんなんじゃないから』
「なまえは、まだ彼のこと、」
『さあ、どうかしらね』
私は知ってた。なまえ先生が肌身離さず身に付けているロケットと、一緒に提げられている傷だらけの宝石の欠けた指輪のこと。その内側には「for my love,」愛する人へ、と彫られている。
先生は、きっとこれからも誰のことも愛さない。ただ一人、ロケットの人をずっとずっと愛し続けるに違いない。
じゃなきゃ、きっと先生は壊れてしまう。こんなに心がボロボロになってまで愛し続けた人だから。先生はマドンナだけど、完璧なんかじゃない。
先生の腕にしがみついて零れる涙を隠した。先生は困ったように笑って私の頭を撫でた。その手が微かに震えていたことは、私しか知らない。