やぁ、君はホグワーツの二大美女を知っているかい?ああ、そうだよね、知らないはずがなかった!僕の愛するリリー・エバンズ!

そして、僕の、


「僕の憧れの女性が君の、君なんかの婚約者だったなんて!信じられるかい!?」

「おい落ち着けよジェームズ」

「僕は落ち着いているさ!とっても!」


彼女はマドンナだった。スリザリンに所属しながら、誰にでも分け隔てなく接し、笑顔を向ける。

なぜ彼女はスリザリンに?

僕の疑問はたった今、解決された。







彼女と同じスリザリン生が、グリフィンドールの1年生を苛めていた。彼女は背にグリフィンドール生を庇い、対するスリザリン生は頭を抱えてうずくまっていた。


『弱者を苛めるなんて愚の骨頂、そんな者、我がスリザリンに必要などない』


彼女の目は、恐ろしく冷酷だった。自分の入る隙もない。見てはいけないものを見てしまった気がした。


『ミスターポッター、いるんでしょう?』

「あ、あぁ」

『彼、傷が酷いみたいだから医務室に連れてって頂ける?』


グリフィンドール生の肩を抱いて僕に歩み寄る。彼女をこんなに近くで見るのは初めてだったし、先程の冷酷さは微塵も、


『私はあの子と話があるから』

「あ、うん」


いや、素晴らしく冷酷な笑みだった。彼女はきっと、どの寮でもやっていけただろう。それでもほんの少しだけ、冷酷さがどれよりも勝っていた。僕は頭でそれを理解して、足早に医務室に後輩を連れて行った。残されたスリザリン生がどうなったかは知らない。







『隣、良いかしら』


ごふぉ、とチキンを噴き出した犬は放って置いて、どうぞ、と緊張気味に促す。大広間での食事に、マドンナが他寮のテーブルにいることは初めてではないにしろ、自分の隣にいるという事実が体を硬直させていく。


『彼、大丈夫だったかしら?』

「あぁ、幸いにも傷は多いけどどれも浅かったみたい、明日には授業に復帰できるよ」

『そう、よかった』


彼女の微笑みは兵器だ。


『私、実を言うとポッターに嫌われてるとばかり思ってたの』

「まさか!!」

『その反応見て安心したわ』

「う、あ、」


しどろもどろになっている僕を見てリーマスが噴き出す。もうなんだよ、と睨みつければふと耳元がくすぐったくなった。


『でも私の大切なスリザリン生に傷を付けたらタダじゃおかないわよ、悪戯仕掛人さん?』

「!?」


かぷ、と僕の耳を甘噛みして、彼女はスリザリンのテーブルに戻った。


「おいジェームズ、お前エバンズ命じゃなかったのかよ」


噛まれた耳に手をあて、首まで真っ赤にしてテーブルに沈んだ僕にシリウスが言う。うるさいよ、見向きもされなかったからって僕にあたらないでくれ。あぁ、それから今日予定してたスニベリーへの悪戯は中止!なんでもだよ!


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