全国大会準決勝、青学と四天宝寺。青学が歓声に包まれ、握手をして試合が終わった。
決勝の相手は青学。関東大会決勝再戦、というところか。青学は手塚が帰ってきたし、こちらも幸村は万全だ。もう負けは許されない。
『あーあ、残念』
「相手は四天宝寺の方が良かったんか?」
『そうじゃなくて、四天宝寺の監督、昔お世話になったから』
「へぇ、初耳だな」
柳がノートをぺらりと捲る様子を見て、跡部系列のスクール通うのが嫌だったんだ、とだけ言って彼女は女テニの準決勝の結果を観に行った。
王者立海は何も男子テニス部だけではないが、今年は珍しく女子テニス部は準々決勝で敗退していた。みょうじまで試合は回って来なかったらしい。明日のシングルス全国大会まで試合は持ち越しだ。
「みょうじ、明日の相手、氷帝の子になると思う」
『やっぱりそう思う?』
女テニの団体決勝、氷帝対名古屋星徳戦シングルス1を立海女テニ部長の伊佐木と観戦している後ろから声を掛けた。
「今年も女子シングルスはみょうじが制覇しそうじゃの」
『冗談やめてよ』
「対戦相手があれじゃみょうじのアップにしかならん」
「みょうじは幸村相手でも本気出さないもんね」
「本気の試合観てみたいのぅ」
「観たいなー」
『……考えとく』
単なる好奇心だった。コピープレイで幸村にも勝るテニスをするみょうじの、オリジナル。
ただ知りたかった。どんどん雲の上へ行くみょうじのことが。
俺達は負けた。二度、青学に敗北した。善戦だった。全力を出し切って戦ったが、負けた。悔いのない戦い。それでも負けは悔しい、すごく悔しい。表情には出さなかったが、泣きじゃくる赤也の背を叩くのが精一杯だった。
閉会して、辺りを見回したけれど、みょうじの姿はない。
そして翌日。
準決勝も難なく破り、決勝試合前の打ち合いをしているのを観ながら幸村が言った。
「みょうじ、なんだか恐いね」
誰も答えなかった。みんなどこかで分かっていた。みょうじはおそらく本気を出す。
試合が始まる。空気が凍った。
『氷の世界、』
背筋が凍るような空気に飲まれた。