初めて長く続いている彼女がいる。今まではその場その場の関係がほとんどで、付き合っても1ヶ月と経たないうちに別れていた。でもこいつは違った。
「雅治、帰ろ」
「ん」
「じゃーな仁王!みょうじ飯食いに行こうぜ」
『えー今日は伊佐木とスイパラだから無理!』
「は?俺も誘えよ!幸村も行こうぜ!」
『着いてくんな!』
「行く!」
彼女の元へ向かう後ろでぎゃあぎゃあとウルサい。
「ふふ、そんなに行きたいなら行って来る?」
どうやら不満が顔に出ていたらしい。
「……帰る」
「素直じゃないんだから」
媚びてくる女でもない。何かを求めるでもない。ただ隣にいてくれる。初めて居心地がいいと感じていた。
そして彼女は、俺がみょうじを好きだということを知っている。
「雅治?どうした…ん、」
初めて、ほんの少しだけ、愛しいと感じた。俺はこいつに、何をしてやれるだろうか。
それから月日が流れた。生意気な後輩ができて、全国で優勝して、季節はもう冬、
固まって帰る練習後、俺は彼女の家に向かうため、みんなが駅のホームに入るのを見送ってバス停へ向かった。
そしてバスがやって来て、乗り込もうとしたとき、バスの横を救急車が通り過ぎて行った。嫌な予感がして、俺はバスに乗り込むのをやめて、救急隊が駆けて行った駅構内へ足を進めた。野次馬がたくさんいた。
ああ、どうしてこうも、嫌な予感というのは当たるんだ。
『幸村!幸村!』
担架で運ばれる幸村の手を握り、泣きながら着いていくみょうじ。真田と柳も一緒に救急車に乗って運ばれていった。
俺は呆然とするしかなかった。
「仁王くん、幸村くんが……」
柳生が野次馬の中に俺を見つけて、悲痛な表情で告げた。
みょうじさんと自動販売機で飲み物を買って戻るとき、みょうじさんの目の前で幸村くんが倒れられて……みょうじさんのあんな姿は、初めて見ました。
こんなときでも、俺の頭は冷静らしい。
「病院、行くぜよ」
みょうじの泣き顔が、頭から離れない。