「幸村とみょうじがか?」

『だるいよねー誰か代わってくれないかな』

「代わってくれるやつは山ほどいるけど釣り合わねーだろぃ」


夏休み間近、期末テストも終わって部活が再開すると、いつもは別コートで練習している女子テニス部員数名がいた。話によると今年はミクスドの試合にも出場するらしく、現レギュラーメンバーから4組のミクスドペアを作るそうで、今回からレギュラーになった幸村も選ばれていた。そして幸村とペアを組むのがみょうじと言うことらしい。幸村とみょうじ以外は全員3年で、居心地が悪そうにしていた。







「みょうじはうまいんか?」

『や、別に大したことない』

「なに言ってんだよ、お前が大したことなかったら女テニは雑魚の集まりになんだろぃ」


3年女子の視線が痛くなった。それにしてもみょうじのテニスはそんなにすごいものなのか。幸村も俺と同じことを考えているようだ。お互いに実力を知るということで、ミクスドのペアはシングルスで試合をすることになった。幸村対みょうじ。幸村の実力は十分すぎるほど知っている。だから余計に不安になる。幸村が手を抜くとは到底思えない。みょうじは大丈夫だろうか。そんな心配を余所に4組の試合が始まった。







幸村とみょうじ以外はすでに試合を終えて、ダブルスの練習なりコミュニケーションなり、あわよくば下心なりとそれぞれだ。

そして男テニ、女テニ、それぞれから最も視線を注がれている2人。小手調べのはずだったのに、王子様対貴公子だなんだと報道部まで駆けつけている。

試合は五分五分。両者共にまだ本気を出していない。端から見れば探り合いと言うところだろうか。


「丸井、彼女は?」

「みょうじ!関東ジュニア優勝者!」

「あの完封試合の覇者か」


幸村と同じようにレギュラー入りした柳が丸井に尋ねる隣で、納得した。噂では聞いていた。ジュニア大会で1ゲームも落とさずに優勝したツワモノがいると。それがみょうじだったのか。そして柳の隣にいた真田の言葉に耳を疑った。


「あの幸村が主導権を握られるとはな」

「ああ、遊ばれているな」


俺達が見ていたのはどうやら作られたゲーム展開だったようだ。レギュラーへの壁はまだ厚い。そう思わずにはいられなかった。


「精市はアレを出させてもらえないようだな」

「みょうじと言ったか、是非手合わせ願いたいものだ」

「止めておけ弦一郎、精市のように弄ばれるのが関の山だ」


幸村の勝利で試合終了。相当不服そうな幸村の表情と、楽しそうな真田と柳。三強と渡り合える彼女に、誰もが興味を惹かれない訳がなかった。


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