「ゲームセット ウォンバイ仁王!」


やりやがった。分かった、分かったから、


「なまえ!勝った!勝ったぜよ!約束じゃ!」

「仁王、落ち着け!」

「なんじゃ真田!俺は落ち着いとるぜよ!」

「「『(どこがだ!)』」」


仁王の後ろに見える青学陣が「良かったな、仁王」という顔をしている。なんだそのほのぼのとした空気は!不二くんがわざと負けた気さえしてくるぞ!


「え?やだなぁそんなこと……ふふふふふ」

「不二、」


手塚くん、キミも苦労するね。うちも似たようなのが「何だって?」なんでもないですすんません、あの可哀相なんでD1の試合見てやってください。







「ちゃんと御粧しするんじゃよ?露出し過ぎはいかんぜよ、それから」

『あーもううるさい分かったから!』

「楽しみじゃのう!」


なんだこの子供は。いや尻尾が、尻尾が見える。D1の試合を私の隣でうきうきウォッチングしている仁王の隣で、柳が物凄い早さでノートに何か書き込んでいる。むしろ今はそっちが気になって仕方ないが大方仁王のデータだろう。この詐欺師が尻尾振るなんて、私も5年の付き合いだけど初めてみた。

丸井とジャッカルが黄金ペアから勝利した途端、ベンチで監督業をしていた幸村が笑顔で振り返り、うるさい、と仁王に拳骨食らわせたのも初めてみた。それはそれは素敵な笑顔だった。







未だに悶絶している仁王は放っといて、柳や赤也がベンチを取ろうとするのをお尻でどしどしと落としてもぎ取る。


「みょうじ先輩酷ぇ!」

「尻で弾き飛ばされるとは、予想外だったぞ」

『うるさい!幸村の試合は私がベンチだ!』


そう言った途端にコートで幸村が盛大に笑い転げた。どうやら一部始終を見ていたらしい。これ以上立海の恥を晒してくれるな、と今度は私が真田に拳骨を食らいベンチで悶絶すると、幸村は腹を抱えてコートをごろごろ転がりだした。一番の恥曝しは彼じゃなかろうか。

幸村よ、何がそんなに面白いんだ。


「だってみょうじ、さっきの言い方、俺の彼女みたいじゃん、俺仁王と三角関係なの?みょうじ取り合うの?考えただけで鳥肌だよ」

『お前そっちで笑ってたのか!失礼だな!というか彼女じゃないし!……おいこら青学!そんな疑いの目で私を見るな!』

「さいっこうだね!」

『お前笑ってないでさっさと試合始めろよ!帰れんだろ!』


ただでさえ仁王があんなで面倒なのに幸村まで、なんなんだ今日は!やっと試合が始まって一息吐けるなんて、普通逆だ。もう頭痛い。早く帰りたい。


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