『あああああ!』
「うるさいよ」
『げふ!』
ストレス発散で叫んでたら幸村に頭をシバかれました。いや、あの、ものっそい痛いんですけど。しかも応援部の部活中。部員がびっくりしてる。
『幸村なにさー』
「明日の練習試合」
『明日朝8時半に青学集合でしょ?』
「応援やっぱりいいや」
『やったー休みー』
「みょうじはマネージャーね」
『え!』
「拒否権ないから」
『精市くんそれはあんまりだよ』
「うわ、鳥肌立った」
『失礼なやつめ!』
応援部のミーティング。日曜日が休みになったと伝えると歓喜の嵐。私も混ざりたい…!
『あ、ジャッカル』
「お前なにやってんだ?」
『悔しさを味わってる』
「は?」
『なんかいなり寿司食べたくなってきた』
「え?」
『ジャッカル桑原いなり寿司〜♪』
「ちょ、なんだよそれ」
今日の晩御飯はおいなりさんで決まり!ふんふふ〜ん♪あ、今日は自転車で来たんだった。さっきジャッカルが通ったってことはテニス部も終わったのか。厄介なやつに捕まる前に帰ろう。
「俺から逃げられると思ったのか?」
『私は帰るんですー』
「腹減らね?」
『晩御飯決めてるし』
「財布…じゃねぇ、ジャッカルが先帰っちまったからよ」
『今財布って言ったね』
この赤いブタさんは本当に厄介だ。早く自転車の荷台から降りてくれ。進もうにも進めないじゃないか!私はおいなりさん食べるんだよ!ジャンクフードよりおいなりさんなの!こうなったらあの手だ。
『丸井が私にふしだらなことをー!きゃー!』
「お前何言ってんだよぃ!」
『きゃーだれかー!』
「丸井!」
「げ、真田」
ふふん、ざまあみろ。真田に捕まったところを見て私は自転車を漕ぎ出す。後ろから覚えてろよ!と声が聞こえた気がするが今はそれどころじゃない。突然ぐらぐらと揺れた自転車、どさりと何かが乗った衝撃。後ろを振り返ればもじゃもじゃ。
『いや、あの……切原?』
「今日チャリじゃないんすよ」
『だからってなにゆえだ!』
「たまにはいーじゃないっすか!」
『……今日だけだからね!』
「やった!あざっす!」
仕方ない。どうせ家も近所だし、帰りに寄るスーパーでおいなりさん買ってもらおう。それで許してやるとするか。
切原が最近本当に弟化してきている気がするのはきっと気のせい……のはず。