「俺は仁王じゃないんだから分かるわけないだろ?」
『ですよねー』
幸村の日課である校庭の花壇の草抜きを手伝いながら相談にのってもらう。
「でもみょうじも仁王のことちゃんと見てなかったんでしょ?」
『今更ですが物凄く反省してます』
「これからちゃんと仁王のこと見て、考えるのはそれからだよ」
『……はーい』
「俺もまさか仁王が本気だったとは思わなかったなぁ」
『人の心って分からないね』
「ねー」
ぶちぶちと雑草を引きちぎっていると、幸村に手を叩かれた。根っこから抜けだって。なんだか今、物凄く雑草になりたい。
「みょうじー」
『丸井だー』
「仁王がこないだから変なんだけどなんか知らね?」
『知ってるけどそれに関してはそっとしといて欲しいっていうかそのー』
「あ、もしかして仁王のやつ、ちゅーでもかましたのか?」
『え!』
「お、ビンゴ?」
なんで丸井が知ってんの!幸村ですらそんな気配感じてなかったのに。
「で、相手誰なんだよぃ」
『ん?』
「お前知ってんだろ?仁王の5年の片想いの相手!」
『ご、ごごご5年!?』
「え、知らなかったのか?」
『初耳すぎてもう頭パンクしそう』
教えろとうるさい丸井を放って、幸村に一言告げてから屋上に向かった。教えろって言われたって言えるわけないだろうが馬鹿!
なにも考えたくないよー!あー!だかうがー!だか叫んでいると、後ろから笑い声。
「お前さん、容量オーバーみたいやの」
『に、仁王…』
そ、そうだった。屋上は仁王がよくいるんだった!
「そんな警戒せんで」
『そう言われましても』
「心配せんでも、こないだみたいなことはやらん」
『そうですかー』
少し離れて座る。沈黙が痛い。
「本当は、ちょっと後悔しとるんじゃ」
『後悔?』
「忍足と良い雰囲気になりよん見て焦ったんかもしれん」
『…………』
「のぅなまえ、正直に言うけ、流したりせんでくれ」
『うん』
「俺はお前さんが、なまえが好きじゃ」
『……5年も前から?』
「……丸井か、そうじゃ、5年前からお前さんのことを想っとる」
『…………』
「今すぐ返事出せとも言わん、5年も耐えたんじゃ、なまえの気持ちが整理出来たらでええ」
『うん、ありがとう……考えさせてもらいます』
授業行くから、と言ってなまえはぎこちない動きで屋上から出て行った。
自分がここまで情けないとは思わんかった。ああ、どうしよう。絶対今顔紅い。人に本音を言うんがこんなに恥ずかしいとはのぅ。さすがに参ったぜよ。