「俺と彼」
大宮くんと真田くんの場合(真田くん視点)


昼休み、部室で弁当を食べていると、窓の外が光った。
少し時間を置いて、遠くで雷の鳴る音。

「雷、だね。」

「ああ、そうだな。
でもまだ遠いな。」

雷全然怖くないけど…。
俺が怖がってるふりしたら、手をつないだり、ぎゅってしたりしてくれるかな…?

それとも、雷怖いとかダサッって思われるかな…?

「真田、雷怖い?」

まだ考えを纏める前に大宮に聞かれて、

「俺、全然怖くないんだ。」

と、思わず正直に答えてしまった。

「そっか。
真田が雷怖いなら、ぎゅーってして耳を塞いであげたいなーって思ったけど。
平気ならいいんだ。」

…今から怖いって言っても、ダメだよな。






「ぴったり」
和居と屋町の場合(和居視点)


夜、寝入ってしばらくした後、屋町に肩を揺さぶられて目が覚めた。

ザーッと雨の降る音。

「和居、雷鳴ってる。」

「ん?雷?」

すると、ピカッと光り、すぐに大きな音が鳴り響いた。

「和居、怖いから隠して。」

雷、怖くないだろうに…。
ピカッと光るのが綺麗で好きだって高校生の時は言ってたのにな。

屋町は高校生の時より甘えたになっている。

「いいよ。
おいで。」

俺が体を横に向けると、屋町は体を少しずらして俺の胸に顔を押し付けた。

「ほら、怖くないだろ。」

抱え込むように屋町を抱きしめ、叩きつけるような雨の音をいつまでも聞いていた。






「のってみたものの」
巧と譲の場合(譲視点)


ストーカーの巧が、我が物顔で俺の家に上がりこむようになってしばらく経ったある日。

日が暮れるまでは晴れていたのに、夜になって急に雨が強くなってきた。
これでもか、という程の強烈な雨と雷。

巧は勝手に俺の家に上がりこむが、泊まっていったことはない。
大体9時には帰るんだけど…。

この雷雨のなか帰らすのは、少しだけ可哀相な気がする…。

そんな気持ちが芽生えてしまった。

「雨がおさまるまで、いていいよ。」

帰る準備をしていた巧に、親切心からそんな言葉をかけてしまった。

俺の言葉を聞いた巧はニコニコと笑い、

「譲、雷が怖い?
子どものとき、雷が鳴ったら、お母さんにべったりひっついてたんだってね。
俺に甘えてくれるんだ、嬉しいな。」

…。
なんで俺の子どものときのエピソードを知ってるんだ…?

あと、俺はお前に甘えてないからね。
ツンデレとかじゃなくて、マジで甘えてないからね。

親切心を出すんじゃなかったと後悔する俺であった。



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