高志が、引っ越してしまった。

ひどいひどいひどい。

俺を置いていった。


俺の知らないところで、高志はどんな生活するんだろう。
考えただけで、胸が潰れる。


嫌だ嫌だ嫌だ。

不安で心配で、毎日高志に電話したしメールした。

でも高志からは、

『授業中は電話とれないし、返信もできない。
蓮も、ちゃんと授業受けろよ?』

って返信があった。

高志は俺がいなくても平気なのかな。

大学生になったら一緒に住む約束をしたことが心の支え。

でも、やっぱり心配。

友達なんか作らないで。
誰とも話さないで。
俺以外見ないで。

お願いお願いお願い。


引っ越してしばらくした、ある日曜日。

高志にメールを送ったけど、5分経っても返事がない。

どうしてどうしてどうして。
すぐに返信してくれないと、苦しい。
苦しくて死んじゃう。


リダイヤルの、一番上を選んで通話ボタンを押した。


『蓮、どした?』

「高志っ!どうしてっ!?
どうしてすぐに返信してくれないのっ!?」

どうしてどうしてどうして。

『あのさ、今さ、友達の家にいるからさ。
また夜に電話するよ。な?』

友達?
友達なんていらないでしょ?
俺の一番は高志なんだから、高志の一番も俺でしょ?

「…友達っ!?嫌っ!嫌だっ!!
高志、すぐ家に帰って!!」

家に帰って、誰にも会わないで。
誰とも話をしないで。

お願いお願いお願い。

『たーちゃん、電話切ってよ。
俺をほっとかないで?』


………。

…たーちゃん、って、高志のこと?

何で?
どうして?

どうしてそんな呼び方されてるの?
どうしてそんな呼び方を許してるの?

『…蓮、電話切るぞ。』

高志、何言ってるの?
何で、電話切ろうとするの?

「高志ッッ!!」

高志高志高志ッ!
高志の唯一は俺なんだッ!

「早く、早く帰ってッッ!!
おいッ、そこにいる奴ッ!
高志に近づくんじゃねぇッッ!!」

許さない。
高志に近付く奴は許さないッ!
高志に触るな高志と喋るな高志を見るな。

『たーちゃん、今は俺と一緒にいるんだから。ね?
あー…、たーちゃんの手って、温かいね。』

血が頭に上るって、このことだ。
カッと熱くなった。

「殺してやるッッ!!」

怒鳴った俺の声、相手に聞こえただろうか。
ケータイはいつの間にか、通話終了していた。




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