02
ある日、席替えがあった。
俺は、藤里の隣の席になった。
やった。
嬉しい。すごく嬉しい。
話しかけることは恥ずかしくてできないけど、でも隣の席。
「あ、前河が隣なんだ。
よろしくな。」
藤里に、話しかけられた。
「うん、よろしく。」
恥ずかしい。
顔に血が集まってるのが分かる。
恥ずかしくて、顔を上げられなかった。
「前河くーん。ね、ね、このチョコ美味しいんだよー?
食べてみてー?」
「あ、このアメも美味しいよー?」
俺の周りにはよく女子が集まる。
自分で言うのもなんだが、多分、顔が整っているからだと思う。
顔で判断するなんて、女子って見る目ないよな…。
藤里のほうが、よっぽど魅力的なのに。
あ、でも、女子が藤里の魅力に気づいたらヤバイな。
俺だけが、藤里のこと好きでいたいな。
そんなことを考えながら、チラッと隣を見る。
すると、藤里と目が合った。
「前河は、モテモテでいいなー。」
ニコニコしながら、冗談っぽくそんなことを言う藤里。
「えー?藤里くんもお菓子欲しいのー?」
「しょうがないなー。」
女子たちも冗談っぽい感じで藤里にお菓子をあげてた。
あ、痛い。
胸が、痛い。
藤里、女子と話してる。
「…前河?具合、悪いのか?」
俺は表情を歪めてしまったらしく、藤里に心配されてしまった。
「…や、うん、大丈夫。」
藤里と会話するのが嬉しい気持ちと、藤里と女子が話してるのを見てしまった痛い気持ちが入り混じる。
「なんか、顔色悪いんじゃないか?
保健室、行こう?」
席を立つ藤里。
「俺、保健委員だし。
一緒についてくよ。」
…この胸の苦しさは、保健室に行っても治らないと思うけど。
でも、藤里が保健室に連れてってくれる。
「ん。ありがと。」
俺も席を立った。
女子たちが心配そうに声をかけてくれたが、藤里と並んで歩けることが嬉しくて、ろくに返事ができなかった。
「せんせー…、いないのか。」
保健室の中は無人だった。
「ま、勝手にベッドに横になっていいんじゃないかな。
ほら、寝た寝た。」
掛け布団をめくり、ポンポンとベッドに横になるように勧める藤里。
「ありがと。」
俺が横になると、そっと掛け布団をかぶせてくれた。
「熱、あるかな?」
そう言って、俺の額に手をあてる藤里。
わ、藤里の、手。
ひんやりしてる。
「顔、赤いな。
やっぱ、熱があるのかもな。」
熱は、あるよ。
藤里のことを、想ってる熱が。
こんなに近くに、藤里がいる。
俺の熱、まだまだ上がりそうだ。
いつか、この熱が藤里にうつればいいな。
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