「大宮のバイト先、行ってもいい?」

バイト先に来てって、夏休みの前に言われたけど、改めて約束を取り付けるとなると、やっぱり緊張した。
ケータイを持つ手が、少し震える。

『うん、来てくれたら嬉しい。』

弾んだ声の大宮。
あ、良かった。
行っていいんだ。

「何時くらいに行ったらいいかな?」

できれば忙しい時間帯は外したい。
大宮とゆっくりしゃべりたいな。

『3時過ぎなら空いてると思う。いい?』

「うん、行く行く。」

『場所は…』


ってな会話があっての翌日。
教えられた場所はすごく分かりやすくて、道に迷うことはなかった。
が、店に入ることができん。

何だ、この緊張感は。
暑さからだけじゃない、この汗は。

額を流れる汗を拭う。

バイトしてる大宮。
どんな格好で働いてるんだろ。
ドキドキ…。

よし、行け、俺っ!

一歩一歩店に近付く。
そして、ドアノブに手をかけた。

「いらっしゃいませ。」

女の人が出迎えてくれた。
その後ろに、大宮。

黒いエプロンをして、トレーを拭いてる大宮。

目が合った。

わー。二週間ぶりの大宮だ。
やっぱカッケー。


大宮はお兄さんとお義姉さんに、付き合ってる相手って俺のことを紹介してくれた。

うう…幸せだ。

お兄さんに至っては“清二をよろしく”って言ってくれた。
うはは。
完全に家族公認じゃね?

あとは、大宮のお父さんか…。
どんな人だろ?

俺のこと、認めてくれるかな…。



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