2と言いながらも10000hit企画小説の
続・電車の彼
の続きなので、実質は3話目です。
ややこしくてすみません。




校門前でイケメンに捕まり、腰抱きされたまま家へ帰る電車の中。

「あ、何か腹痛い。
いたたたたた………。」

腰に回された手から自然に離れるために、痛くもない腹を抱えて通路にしゃがみこんだ。

「健太郎、大丈夫?」

俺と一緒にしゃがみこんでなお、俺の腰に手を回すイケメン。

「や、ちょっとムリ。
うん。今日はムリだな。
悪いな。
ほら、もう降りる駅だろ?
また明日な。」

イケメンの降りる駅が近付き、車内アナウンスが流れた。

「具合の悪そうな健太郎をひとりで帰らせられないよ。
送っていく。」

本当に心配そうな声を出すイケメン。

………俺、別に悪いことしてないよな。
コイツがおかしいんだよな。
でも何か、悪いことしてる気がする………。

「あ、うん。
ありがと…。」

違うって、俺!
ありがとうなんて言うんじゃない、俺っ!

「健太郎の為だから。
何だってしてあげるよ。」

ぷしゅー、という音。
イケメンの降りる駅で停まった電車の、ドアが閉まった音だった。

ああ…。
やっぱり諦めるしかないのか…。
どうあってもコイツは家に着いて来るんだな…。


俺の家の最寄駅で、イケメンと降車。

「健太郎、まだお腹痛い?」

俺を気遣うイケメン。
最初から痛くなんてないけど、痛いフリを継続することにする。
治ったなんて言ったら、何されるかわからん。

「あー、うん。
痛い。」

わざとらしくお腹をさする。

「そっか。
じゃあおんぶしてあげるよ。
背中乗って?」

カバンを手に持ってる状態でおんぶするのはしんどいだろ…。
って、思ってる場合じゃない。

おんぶウエルカムな状態のイケメンに、周囲の目が集まる。

「嫌だって、そんなの。」

うお、思いっきり本音が出てしまった。

「嫌なの?」

少し尖った声を出したイケメンはすっくと立ち上がり、俺を見下ろした。

蛇に睨まれた蛙状態の俺。
でも、やっぱ嫌なもんは嫌って言うべきだよな…うん。
今更かもだけど。

「そっか、ごめんね。」

イケメンはにこやかな声で俺に謝った。

分かってくれたのか?
と、期待した俺。

しかし、イケメンはまた突拍子もないことを言い出した。

「お姫様抱っこがいいのかな?
…カバン持ってなかったらしてあげられるんだけど。
あ、カバンをそこのコインロッカーに預けてくるね。
ちょっとだけ待ってて。」

あわわわわ。

「おんぶでいい!!」

とっさに叫んでしまった…。
姫抱っこされるくらいなら、おんぶのほうが何倍もマシ。

「そう?
じゃ、早く帰ろう?」

逃げられん…。
ちっとも具合悪くないのに、おんぶしてもらった。

「家はどっち?」

「この道、まっすぐ…。」

俺はイケメンの背中で深く深くため息をついた。

近所の人に会いませんよーに!!と、心の中で激しく祈った。





あとがき

イケメンくんの名前がでてこなかった…。



短編topへ

- ナノ -